日医ニュース
日医ニュース目次 第1127号(平成20年8月20日)

勤務医のページ

勤務医の抱える諸問題の解決に向けて
─開業医と勤務医の団結のために─

医師勤務形態の構造変化

 わが国では,戦後長らく開業医数が圧倒的に多かったが,一般病院の大幅な増加とともに,勤務医の増加が顕著となり,昭和五十四年には開業医数を凌駕した.
 この傾向は年ごとに明らかとなり,平成十八年には,医師総数二十七万七千九百二十七名のうち,勤務医数は六七%を超えている(図)

勤務医のページ/勤務医の抱える諸問題の解決に向けて/─開業医と勤務医の団結のために─(図)

日医会員の変化

 昭和二十二年,新生日本医師会創立時の会員数は五万三千三十名.昭和三十年における会員内訳は,A会員六七%に対しB・C会員合わせて三三%であった.
 その後,A会員の増加が著しく,昭和五十八年にはA会員が七二%を占めた.この年,日医会内に正式に勤務医委員会が設立され,昭和六十二年からは日医医師賠償責任保険に勤務医を包含したことも相まって,平成三年には勤務医会員は四〇%に増加した(日本医師会創立記念誌.一九九七).
 このころから,開業医,勤務医にかかわらず,国民医療のために大同団結して,行政,社会と当たるべきだとする議論が活発になり,平成十九年十二月一日現在,A(1)会員八万四千八百七十九名(五一%),勤務医会員八万二百七名(四九%)とほぼ同数となっている.
 しかし,日医代議員に占める勤務医数は,現在でもきわめて低い.

勤務医の抱える諸問題

 政府の医療費削減政策が続くにつれ,勤務医の疲弊が明らかとなっている.
 垰田和史滋賀医科大准教授らは,大阪府下勤務医における調査の結果,開業・離職を希望する群では,将来も勤務医を続けるとした群に比べ,勤務時間が長く,休日勤務や泊まり勤務への参加率が高く,疲労の程度が強いこと,さらに患者や家族から理不尽な扱いを受けた者の割合が高いとしている.
 勤務医の離職対策として,労働負担の軽減だけでなく,休日や家族生活への配慮に加え,不当な扱いから医師を守ることが必要である(垰田和史,他:社会医学研究.第二十五号.二〇〇七).

解決に向けて

 これらのことを踏まえ,石川県医師会勤務医基本問題検討委員会において,早急に行うべき具体的勤務医支援施策について検討した(表)

勤務医のページ/勤務医の抱える諸問題の解決に向けて/─開業医と勤務医の団結のために─(表)

勤務医は開業医の原点

 医師のライフパスで,最初から開業医である者はいない.ほとんどの医師が,最初の十年間は勤務医として研修を積む.
 患者に対して最善の治療を行うとともに,共感を持って寄り添う姿勢も,自らを厳しく律し,常に研鑽を重ねる態度も,あらゆる社会不正義を許さず,病者,障害者が尊厳を持って生活出来る社会の確立に努める活動も,患者,地域住民,国民とともに歩む行動も,勤務医と開業医とで変わりはない.これらは医師の責務であり,この一つの夢のために,今こそすべての医師は団結すべきである.
 勤務医への支援が,わが国の医療体制の崩壊を食い止める唯一の方策であることを,開業医は改めて銘記すべきである.勤務医は,すべての開業医の原点でもあるのだから.

(石川県医師会長 小森 貴)

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