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第1127号(平成20年8月20日) |
地域連携パスに乗った患者は高速バスのようにてんやわんや
第五次改正医療法で求められている医療機能の分化・連携の促進は,地域医療機関同士のネットワーク化と情報の共有により,効率的で良質な医療が行われることが命題となっている.
昨今の病院はパスの使用が常識化し,空床を抱えながらも規定日での退院を勧めている状況である.ゆっくり治療を受けようと入院した患者さんにとっては,めまぐるしいことこの上ない.パス上では,入院から退院まで無駄なく企画された日々のイベントが,ベルトコンベアーに乗ったように押し寄せる.退院の時は,いわば滑り台の最後で,飛び出しのタイミングが計れないままに押し出される感が否めない.生命保険契約も,短い入院日数での受け取りとなり,不満が残る.
さらに,これからは地域連携パスの適用により,退院した後,治療を受けた所ではなく,回復支援施設,あるいは「いわゆる,かかりつけの医師」への通院となる.主治医がせっかく治療について一生懸命説明しても,理解も半ばにして,「とにかくお任せします」と答える患者さんが未だに多い.従来の患者観念では,一人の医師を主治医と決め,任せきる傾向があったものを,今後は運転手の交代のように,「いわば,その都度主治医制」になるということである.今行われている治療が,世界共通の認識に基づいた標準的治療であることや,診療の基礎となる個々の情報が確実に伝えられていることを十分説明し,理解を求める必要がある.
医療機能の分化が求められている現在,『だれもが質の高い医療を安全に効率良く受けられるようにすること』を第一義として,患者さんの説得に当たらなければならない.また,私たちも主治医グループとして,地域病診連携カンファランス等を通じて,その質維持への努力が不可欠である.
(富山県立中央病院副院長 能登啓文) |