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第1131号(平成20年10月20日) |
さいたま発“救急医療の危機!─皆で支え合おう 地域の救急─”
埼玉県医師会勤務医部会では,八月二十四日,「救急医療の危機!─皆で支え合おう 地域の救急─」をテーマとした県民フォーラムを開催した.
あいにくの空模様にもかかわらず,約五十名の参加があった.吉原忠男埼玉県医師会長のあいさつにつづいて,金井忠男県医副会長,谷本秀司県医常任理事の司会のもと,県民代表として,県母子愛育会より安野氏,佐々木氏,さいたま市消防局より塚田氏,県医勤務医部会から細田洋一郎・小谷昭夫両副部会長,行政より宮山徳司県保健医療部長が参加し,座談会形式で行われた.
安野氏は,妊娠から分娩まで継続性のない産科医療への不安,一部の市民病院で行われている救急の制限を指摘.佐々木氏は,障害者や高齢者の救急搬送に関する問題を提起した.塚田氏は,救急車利用の六〇%は軽傷,三千件は不適切利用であるとの,さいたま市の現状を紹介した.
受け皿となる公立病院の立場からは,細田氏が,救急の崩壊は,医師不足(特に小児科),訴訟リスクの増大,当直明けもフル出勤する勤務医の過重労働などが原因であると指摘,小谷氏は,小児科医不足から分娩を制限せざるを得ない状況にあること,救急でも専門医の診察を要求する傾向があることを指摘した.
宮山氏は,現行の救急体制(一〜三次)は,住民にあまりよく理解されていないこと,県看護協会の#8000,県救急医療情報センターなどの相談窓口の活用や,かかりつけの医師を持つことの重要性を指摘.さらに,救急医療に対する診療報酬の見直しも必要と述べた.
地域救急の危機を救い,勤務医の労働環境を改善するには,国の医療費抑制政策の撤回,医師不足の解消,それから,皆で救急を支え合おうというコンセンサスが必要とのわれわれの意図は,ある程度,参加者に理解されたという印象を持った.今後も,継続して,県民フォーラムを行いたいと思っている.
(丸山記念総合病院院長 戸倉康之) |