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第1133号(平成20年11月20日) |
河内長野の応戦
大阪南医療センター第三内科医長 幸原晴彦
河内長野市は,大阪府南部に位置する衛星都市である.ここでは,医療への逆風を遡上する新しい動きが,医師会内部で活発に起こっている.
当医師会は,訪問看護ステーションを持ち,また,圏域小児救急体制を確立している.成人の救急病院“たらい回し”の新聞報道後,医療や行政関係者が成人の救急体制整備の本格的な協議を開始した.また,医療崩壊のなか,地域医療支援病院を目指す大阪南医療センターを中心に,診療圏の整備が粛々と進行している.
石倉先生率いる在宅医療部会は,第二十二回在宅サロンも盛況で,若い介護士まで関心が高く,当院のがん診療体制とも連携し,地域ケアを構想する.泉谷先生,橋爪先生らが中心に,地区全校医の協力を得た数千人の小児肥満研究は,短期間の統計でも肥満指導に効果が出ており,苦境の小児科開業・勤務医共同戦線である.
第三内科でも,律動的病診連携という新しい生活習慣病社会治療法を,医師会員と共同で開発した.
この地は一人の医師でも社会プロジェクトを展開できる適度の人口であり,また新参勤務医が自由に地元医師会内で活動できる雰囲気がある.われわれがつくり上げる医療体制は,医療都市としての価値を高め,人口流入と新たな都市投資を誘導するであろうか.
また,新たな地域医療システム創造への開業医と勤務医の実験的貢献は,これに続く医師を引き込むことができるであろうか.
医療制度改革関連法の公的医療費抑制に対抗する守りの発想から転じ,成長産業である医療を国家財政の呪縛から解き放つ発想の転換が必要であろう.
保険診療を基盤とした,介護から病診連携まで滑らかに関係し,今と大きく制度を変えなくとも実現できる医療都市構想は,各界を巻き込む積極的応戦のモデルになり得るのではないかと思う.
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