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第1137号(平成21年1月20日) |
医師・看護師不足について
板橋区医師会病院長 泉 裕之
産婦人科や小児科の医師が不足していると言われ始めてから久しい.産婦人科・小児科だけではない.麻酔科医師も不足している.内科や外科の医師数も十分とは言えない.
最近では,合併症を持った妊婦の受け入れ態勢が問題になっている.これを受けてNICUや周産期センターを増やすという.建物は建つかもしれないが,ここに勤務する医師はどうするのであろう.少ない人数で,負担が大きければ,医師は疲弊し,また去って行くだろう.
実際に医師数が減少している訳ではないようである.医師の配置に不均衡が生じているようである.新医師臨床研修制度の影響であるとも言われている.
医師だけではない.看護師も不足している.小規模な病院では,特に厳しい状況である.退職者は例年並みであるが,入職者が少ない.近隣では,看護師不足のために閉院を余儀なくされた病院もある.私の病院でも,病棟の縮小を検討している.
なぜ,このようなことが起きたのであろうか.七対一看護が新設され,大病院がこれを取り入れるようになった結果,看護師数がより多く必要になった.看護師の争奪戦が始まり,看護師不足の病院が増加した訳である.
より魅力ある病院に看護師が集まるのだから,競争をすれば良いと言われるかも知れない.しかしながら,大部分の病院は,すでに大きな努力をしてきたはずである.
新医師臨床研修制度も七対一看護も悪いことではない.しかし,新しい制度を取り入れる時には,どのようなことが起こりうるのかを十分に検討し,対策を立ててからにして欲しい.
身近な病院を失うことにより,近隣の住民の不安や落胆がどれほど大きいのかを考えなければいけない.
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