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第1139号(平成21年2月20日) |
医師不足 やる気だけでは解決せず
新潟県立がんセンター新潟病院臨床部長 梨本 篤
OECDによると,二〇〇六年の人口千人当たりの医師数は,ドイツ三・五人,フランス三・四人,米国二・四人に対し,日本は二・一人であり,病床百床当たりの医師数は,米国七十六・三人,イギリス六十九・〇人,ドイツ四十一・六人に対し,日本は十四・九人と少なかった.日医の調査でも,病院医師は,二次医療圏の八三・九%で不足と認識されており,医師不足を理由として,外来の閉鎖・休止・縮小をした病院が一八・三%,病棟を閉鎖・病床を縮小した病院が九・五%,夜間等の救急対応を休止とした病院が七・一%であった.日本の医師不足は由々しき事態であり,医療事故,医療崩壊へとつながる.
医師は半分ボランティア精神で選んだ職業でもある.多くの医師たちが医療に対する責任感にあふれ,前向きに取り組んで来た.今の医療を少しでも良くしようと努力し,頭を悩ませている.それにもかかわらず,対策に乗り出すべき政府関係者から,「忙しいだの,人が足りないだのと言うのは言い訳に過ぎない」などとの問題発言を聞くと,あきれてしまって,悔し涙が出てくる.「過酷な医療現場で疲弊している医師に対し,石を投げるようなもの」との医師会の反論は当然である.
イギリスでは,「ゆりかごから墓場まで」を合い言葉に,戦後,年金制度,医療制度が整備され,日本もこれを参考に医療制度の整備が進んだ.しかし,イギリスではその後,医療抑制と官僚管理の強化により,医療が崩壊した.日本も同じ道を歩んでいる.医療費抑制政策により,勤務医も減少した.
国もようやく医療政策に本腰を入れてきたが,その効果が出るのは十年先であろう.日本の優秀な医療(医学,医術,医道),世界に誇れる医療を,自信を持って次期を担う先生方に引き継ぎたいものである.
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