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第1147号(平成21年6月20日) |
小豆島の勤務医
香川県小豆島町立内海病院長 久保文芳
島の医療は危機に瀕している.
瀬戸内海の中に浮かぶ小豆島は,四国,本州までフェリーで一時間,高速艇だと三十分の距離のため,近場の観光地として有名で,私が勤める内海(うちのみ)病院の近くには二十四の瞳で有名な「岬の分教場」がある.秋には紅葉が見事な寒霞渓(かんかけい),さらに,小豆島を全国ブランドとしているオリーブの並木が続いており,島の人は自然に恵まれた環境で穏やかな日々を送っている.
しかし,島の医療は大きな危機に瀕している.新医師臨床研修制度導入後に顕在化した医師不足による地域格差,診療科格差が襲ってきた.
そもそも,島の民間医療機関はこの二十年で徐々に減少,新規開業医は三名しかいない.島内の医師は平成十一年五十七名をピークに,現在,開業医十名,勤務医四十一名の計五十一名である.二つの公立病院の勤務医は当院に十八名,土庄中央病院十名で,それぞれ百九十六床,百二十六床の病床を受け持っている.病床百床当たりの医師数にすると十一・五人であり,香川県十二・七人,全国十四・八人(平成十八年調査)と比べて少なく,勤務医の負担は大きい.そして,本年七月より当院の内科医が二名減員する.
海上交通は便利でも,自由に行き来できない島での生活は新たに勤務してくる若い先生には精神的にも身体的にも負担である.島での医療が若い医師に魅力あるように,勤務形態から給与についても自治体病院として新たな取り組みをしなければ,医師の招聘(しょうへい)は無理であろう.
「来てくれない」ではなく,「島での医療を経験したい」「島の医療に貢献したい」と,若い医師が自ら思うような病院づくりが必要だと考える.
島では専門性を活かし,全人的な医療を行ういわゆる総合医の診療が経験出来る.疾患だけでなく,全人的に患者を診るベテランの先生たちと一緒に診療を行うことで,医師として新たな生きがいを得ることも出来る.交通の便がよければ,島外からの朝夕の通勤も可能であり,当直体制,病棟応援体制などが充実すれば,夜間の患者管理も出来る.
しかし,そのためには,病棟担当医を充実しなければならない.医師の招聘には自治体が離島勤務手当てを受け持つなどの方策も必要である.
マンパワーを集めるには島の良さをアピールしていきたい.公立病院改革プランの中でも,政策として医師を集めることを地方行政の目標として,島の地域医療に取り組んで行きたい.
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