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第1151号(平成21年8月20日) |
「医療版事故調」の議論と学会,医師会
新潟県立新発田病院内科部長 伊藤英一
いわゆる「医療版事故調」設置法案の大綱案は,平成二十年六月十三日に公表された.この大綱案に対する意見募集は公表と同時に開始されたが,期限は定められておらず,大綱案の元となる試案を検討してきた厚生労働省の検討会は,同年十二月一日以降開かれていない.
大綱案や試案に対して,多くの学会から意見が寄せられた.大勢は原則的には大綱案を支持しているものの,一部からは強い反対意見が出されている.
私が所属する日本内科学会は,平成二十年八月十八日付で大綱案への九点の懸念を記した意見書を関係十三学会共同で提出し,公表している.平成二十一年四月に開催された総会のパネルディスカッション「医師法二十一条から中立的専門機関の創設に向けて」の会場でも,この意見書が配布された.しかし,演者たちの講演では,懸念の九点に関する言及はほとんどなく,時間切れで議論も行われなかった.
その後,この企画の総括や大綱案に関する議論を聞かない.
日医は,四月二十一日に,都道府県医師会に対し,「医療安全調査委員会設置法案(仮称)に関するアンケート調査」を送付したとされている.一部の郡市区医師会では強い反対意見が出され,議論を尽くすことが同時に求められた.
先日届いた新潟県医師会定例総会の案内に,この法案に関する講演が予告されているが,講演は議事次第終了後の特別講演であり,議論する場でないことがうかがわれる.
本件は第一線の,特に勤務医への影響が大きい.組織の代表者たちが当事者の意見を反映出来ないまま組織の意思決定をしているように思われ,大きな問題と考えている.
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