日医ニュース
日医ニュース目次 第1161号(平成22年1月20日)

勤)務医のページ

座談会(最終回 平成21年7月3日開催)
「勤務医が安心して医療を続けられるために」をテーマに

医師の団結について

 池田 医師の団結ということをテーマに少しお話しいただきたい.
 多賀 医師会がどのような方向を目指すのかにもよると思います.医療全体を見回して,医療制度や診療報酬だけでなくて,臨床研修の教育も含めて教育や研究,医療全体に対して意見を述べていきたいとか,革新的なことをしていきたい,国民のためを思って何かしていきたいというのであれば,当然勤務医の数が圧倒的に多いわけですから,勤務医を取り込んで,医師全体の意見,コンセンサスとして国に要望するとか,政治的な活動をするとか,そういうような流れがあってしかるべきではないかと思っています.
 知花 確かに医師会は開業医の団体のような感じがしますが,沖縄県では学会が年二回,医師会主導でずっと行われていますし,研修医の発表の登竜門になっています.良い活動もされていますが,本日いろいろとお話を聞いていて,重症患者や救急医療を担うリスクの高い勤務医に応分の対応が必要だと思うのですが,未来は暗いなと思ってしまいました.
 勤務医の意見をしっかり拾って,厚生労働省などに立ち向かっていただく態度があれば,勤務医は医師会に賛同すると思います.
 小林 「医師の団結」といってもあまりピンときません.開業医,勤務医の立場もありますし,「共通利害」という観点では向いている方向が違うように思います.国民,医師,行政という三つの立場があるとしたら,行政にもの申すために団結するというより,医師が未来の医療を考えていくために,国民の意見を聞いたり,こちらから情報を発したりするために集団になるという方向に共感します.
 黒木 医師の団結というところでは,医師会と勤務医なり,それこそ地方からとか地域から団結しなければいけないのではないかと思います.
 私も医師会に入ってはいるのですが,地域全体の医療をどうしていきたいかということが医師会の中に見えないので,活動自体をもっとオープンにして,まず地域医師会のなかで,活動をもっとしていくようなことが必要だと思います.
 また,医師会の中にも若手の医師が入らなければ,新しいアイデアや動きが出てこないと思うので,本日のような取り組みが地域の医師会などでもっと行われていけば,打開策は見えてくるのではないでしょうか.そういう一歩から始めないと,医師の団結は生まれないと思います.
 磯和 私が医師会に入ったのは六年前です.逆に言うと,それまで十七年間医師をやっていたのに,医師会には入らずに来たのです.病院が会費を出してくれるので,機関誌を読んだりはしていますが,医師会の会員であるという意識は希薄で,医師会のなかの勤務医というのは一体何なのだろうという思いがいつもあります.
 勤務医は,勤務医全体の意見を国に言うような機関がないので,医師会のなかで勤務医が,もっと大きな声で色々なことを国に言えるようになれば,会員数も増えていくだろうし,若い人も入ってくると思います.結局,今は,勤務医として入ったところで,何になるのかという思いがあると思います.
 知花 沖縄県では,学会に発表するには医師会の会員にならなければならないので,若い者はほとんど会員になっています.開業の先生たちとも勉強会を一緒にしていますし,空気の流れは非常に良いと思います.ただ,その先生方に,勤務医の労働時間や診療報酬をどうにかしてくれと言っても,現実的には話だけで終わってしまうことが多いので,勤務医の意見を受け取って,それを国や行政に言ってもらえると,非常に身近に感じるようになるのではないかと思います.
 多賀 今の日本の国の政策なども,医師のなかで対立構造を作り,意見の弱体化を図ろうとしているのは見え見えなのです.
 それで良しとするのかどうか.勤務医は勤務医として新しい団体を作って,勤務医が要求をしていく.開業医は開業医として日医を舞台に開業医の権益擁護団体として意見を出していくのが良いのか,もしくは,新しいコンセプトで新しい医師会を作っていくべきなのか,考えなければならないと思います.

勤務医が安心して医療を続けられるために

 池田 今日のメインテーマ「勤務医が安心して医療を続けられるために」について,最後に一言ずつお願いします.
 磯和 われわれは,いつも危険と隣り合わせのような,狭い道を車で横に当たらないように一生懸命走っているようなところがあるのです.それでも私は結構生き甲斐もあって,楽しくやっているのですが,それを若い人が魅力と感じてくれるのかという思いが常にあります.勤務医がもう少しハッピーになれるように,われわれはもちろん努力しなければならないのですが,医師会などの大きな団体がバックアップをしてくれたらと思います.
 黒木 明るい安全な労働環境を考えると,やはり医師の数自体が足りないので,数を増やして欲しいと思います.また,診療報酬,医療費を削減していくのは限界だと思いますので,医療費そのものをある程度確保していく活動を,さらに推進して欲しいと思います.
 皆が楽しい職場になるには,そこにある程度余裕がないといけません.ドクターフィーなど,頑張っている現場に何かもっと直接目に見える形で来るようなシステムを作っていただければ,もう少し変わるのではないかと思います.
 小林 若い医師は,お金のためにやっているわけではなくて,やはり生き甲斐を伴ってくるお給料があれば良いと思っています.
 患者さんのために良い医療というのを目指して,若い医師は特にそういう思いが強いと思うので,そういう動機を持続していけるようなシステムというのが望ましいと思います.人に要求するばかりで恐縮ですが,では一体どういうものが良いのかとか,そういう目を持って,明日から働いていきたいと思います.
 知花 自分の生活には満足しているのですが,当直明けは半分帰して欲しいとか,そういうことは感じています.
 私は沖縄県医師会の会員なのですが,まだ何となく勤務医というのは医師会から少し離れている感じがします.ぜひ,勤務医の意見を汲み取って,医師会として勤務医のための活動も含めて行動していただけるとありがたいです.
 今回,医師会のテレビCMを見て,「なんて素晴らしい」と,医師会も変わってきたなと思いました.今後,勤務医のためにも力を尽くしていただければ,ありがたいと思いますし,最終的には患者さんや国民を味方に付ける団体になるとより素晴らしい団体になると思います.医師会には密かにかなり期待しています.
 多賀 今まで医師会を身近に感じたことはありませんでしたが,今回,座談会に呼んでいただいてこういう意見を吸い上げてくれるというような機会を作ってくれるだけでも,医師会は少し変わってくれたのかなという気はします.医師会は,今まで取り上げてこなかった若い医師の意見や勤務医の意見などもドンドン取り上げて,医師全体としての要望,行動を国に対して起こすべきだと思います.
 毎日目をこすりながら暗い道をぶつからないように運転しているような勤務状況で診療を続けているわけですが,そんな状況が少しでも改善して,後輩を無条件に誘えるような職場にしてあげたいというのが私の気持ちです.
 三上 さまざまなテーマにつきまして,現場の貴重なご意見をいただき,ありがとうございました.本日寄せられましたご意見等を真摯に受け止め,今後の会務に活かしていきたいと思います.
 池田 今日は本当にありがとうございました.

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