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第1163号(平成22年2月20日) |
地域医療再生基金への期待
玉名郡市医師会立玉名地域保健医療センター院長 岡本喜雄
当センターが開院して今年で二十五年になるが,当時は救急告示医療機関の指定を受けていた診療所が当医師会内で七カ所あり,初期救急時間外診療を他の一つの公立病院と共に一手に引き受けていた.しかし,十四〜五年前から減り始め,十年前にとうとうゼロになってしまった.
それでも小児を中心とした初期救急は,夜間の時間外診療も含めて当センターに会員が輪番で来院し,住民の診療に当たっている.外科や耳鼻科の先生までも小児科診療に協力され,何とか地域医療を守ろうとしている姿には,本当に頭が下がる.
問題は二次救急である.数年前までは当センターや当地の公立病院のスタッフが充実し,ほぼこの地域内で医療は完結していた.しかし勤務医の減少で当センターは一時期の十六名から現在は七名に減った.公立病院も同様で,二次救急医療機関・災害拠点病院でありながら,夜間の手術は出来ないし,診療科によっては初期救急すら不可能な状態である.
熊本県は人口当たりの医師数は全国で十番目で,決して少ない方ではない.しかし,熊本市を中心とした地域に偏在し,他の二次医療圏はすべて医師不足である.
熊本県では,昨年末,地域医療再生基金を基にした事業内容の決定に当たって,関係機関と話し合い,医師等確保対策に重点を置くことになった.熊本大学医学部に寄附講座を設置し,その講座を窓口として各地域の中核病院に医師を派遣する仕組みの構築,将来地域医療に携わることを条件とした医師修学資金貸与制度,県内外への広報等を通じて県全体で臨床研修医を確保する体制を強化する事業等々.
医師不足の深刻な天草・阿蘇地域が当面の対象となるが,これらの地域が充実すれば当然他方面への波及効果がある.地方の病院に勤務する身としては,これらの事業に期待するものは極めて大きい.
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