日医ニュース
日医ニュース目次 第1171号(平成22年6月20日)

勤務医のひろば

医学における研究者支援
東大大学院医学系研究科疾患生命工学センター
放射線分子医学助教 細谷紀子

 大学における勤務医は,臨床,教育,研究の三つの役割を担う.ここでは,研究および教育を担う一研究医の立場から,生の声を届けたい.
 私は大学卒業後,十年余り血液・腫瘍内科医として大学で臨床・研究・教育に携わった後,研究を主軸に活動するようになった.DNA損傷に対する生体の応答を分子レベルで研究している.遺伝情報を正確に維持するシステムの破綻は,がんの原因となるうえ,DNA損傷を人工的に作り出すことによってがん細胞を撲滅しようとする放射線治療や抗がん剤治療の原理にもつながる.
 一貫してがんの病態解明と治療開発を目指してきた私にとって,未解決の問題が多く,染色体異常が生じることや個々のがんによって治療への反応性に違いがあることの本質に迫ることの出来るこの領域に取り組むことは,大きな魅力である.
 さて,近年,若手研究者・女性研究者の支援の必要性が叫ばれている.医学における研究者支援・育成を考える場合,医学研究者や医師の実情を加味したシステムづくりが不可欠だと感じる.日進月歩の医学において最先端の研究・診療活動を展開するためには,多様な研究・診療のスタイルや支援のニーズがあり得る.
 育児支援という点では,二十四時間保育,病児保育など,柔軟に選ぶことの出来る支援システムが必要である.また,研究費の獲得・研究支援者の雇用支援も大切な課題であり,臨床経験を含む多様な経歴があり得る医学研究者の年齢的ハンディを考慮した医学研究助成制度が充実することが望まれる.医学生に対し,早期に医学のプロフェッショナリズムを教育することも大切だろう.
 私自身も,現在小学生である二人の子どもを育てながら,自分の信じる道を歩んでいきたいと思う.

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