日医ニュース
日医ニュース目次 第1175号(平成22年8月20日)

勤務医のひろば

100年経っても日本のサッカーは優勝出来ない
岩手県立中央病院副院長 (呼吸器科)・感染管理部長 武内健一 

 「ついに来たか」これも齢だから仕方がないか,と諦めた.聞こえるはずのラ音が聞こえない.愕然とした.「どうも聴こえないんだ.聴診器が悪いのかな?」手に取った仲間が「これじゃ聴こえませんよ.イヤピースの穴が耳垢でふさがっています」二十年も使っているが一度も手入れをしなかった.
 恥ずかしいことこの上なかった.耳垢の掃除をする間もなく忙しいのか?と言われそうだ.
 私も含め,勤務医は相当な激務の中だ.忙しさの一番の要因は高齢・超高齢者で,神様がセットした自然の成り行きで死に向かうはずの体内回路onの患者さんが押し寄せることだ.一秒でも命を永らえるのが医療者の使命だ.しかし,限界があるのも事実だ.頑張っている若い仲間に「何もしないのも医療だよ」とは言い難い.
 二番目は俗に言う「モンスター何とか」.限界を理解出来ず,死を真正面から受け止めることが出来ない.そのために仲間のエネルギーがどれほど費やされていることか.
 責任を転嫁するつもりはないが,国民の死生観・倫理観に係る微妙な問題だけに,ここはマスコミの力をお借りしたい.いや,マスコミの出番で社会的責務だ.世のこの風潮を変えなければ医療者をいたずらに疲弊させ,世界に誇る国民皆保険制度を破綻に追いやることになる.でも,出来る限り頑張ろうよ.こんな俺たちでも頼ってくれて,「ありがとう」って言ってくれる人々がいる限り.神様はきっと見ていてくれるはずだ.
 おーっと,本題に入る前に字数制限だ.座薬が効きすぎて熱が冷めたワールドカップだった.鹿島アントラーズの小笠原満男後援会長としては,満男が出ていないこともあるが,日本は百年経ってもワールドカップで優勝することは出来ないと思う.
 その理由は次の機会に譲ることにしたい.

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