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第1177号(平成22年9月20日) |
小児初期救急医療体制の充実
大阪市立住吉市民病院副院長 舟本仁一
日本小児科学会が提言する小児医療提供体制の改革構想は,その実現に向け大きく動き出している.
小児初期救急医療体制については,小児医療圏(多くは二次医療圏)に一〜二カ所認定される地域小児科センター(主に二次救急を担う)に,広域的な初期救急施設を併設もしくは隣接して設置し,地域の医師会,病院勤務医,行政が協力して運営,二十四時間三百六十五日体制を構築することが必要としている.
提言の契機となったのは,全国各地で顕在化した小児救急の現場での混乱であった.
初期救急では,小児科医など担当医の不足,不十分な医療機能,高次医療機関との連携不足といった課題が現在まで持続しており,その影響をまともに受けた二次・三次救急の現場では,独自の問題点を抱えるなかで軽症者の受け入れという負荷が掛かり,混迷に拍車が掛かった.
各地域にはそれぞれの事情があり,画一的モデルの実現は困難であると思われるが,山口県周南医療圏,栃木県足利市といった小児科医の絶対数が少ない地域においても提言に沿った方式が実を結びつつあることを,全国の関係者は注目すべきである.
一方,救急現場でみられる不要不急の受診への対応も,同様に重要である.背景には,一部の受療者側に社会的共有資本としての医療サービスを享受するという自覚と責任感が欠如していること,提供される医療情報が有効に機能していないことがある.
有名な兵庫県立柏原病院小児科をめぐる地域住民の活動ではこうした問題について正面から向き合い,成果を上げている.
今後,同様の活動が全国に広がることを期待するとともに,われわれ医療提供者側も,住民やメディアとのヘルスコミュニケーションを通じた協力が求められることを自覚したい.
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