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第1181号(平成22年11月20日) |
平成22年度全国医師会勤務医部会連絡協議会
「地域医療再生〜地域の力,医師の団結〜」をテーマに
平成二十二年度全国医師会勤務医部会連絡協議会(日医主催,栃木県医師会担当)が,「地域医療再生〜地域の力,医師の団結〜」をメインテーマとして,十月九日,宇都宮市内で開催され,四百十四名が参加した.今回初めて一般公開され,約五十名の市民参加があった.
冒頭,原中勝征会長は「地域医療の崩壊から一刻も早く脱却し,再生への道を切り開いていくことが本会に課せられた使命である.勤務医が安心して働ける医療環境を整え,国民の命と生活を守るには,診療報酬を始めとする様々な財政支援が必要で,そのためには勤務医の力強い後押しが必要」とあいさつした.
続いて,太田照男栃木県医師会長があいさつに立ち,「地域医療,地域医師会にとって,勤務医の協力は不可欠で,勤務医の医師会加入促進を図る必要がある」とした.
特別講演1
原中会長が,「医療の明日のために,今,できること─日本医師会の変革と地域医療の再生」と題して講演を行い,「勤務医と開業医という分け方は意味がない.心を一つにして医療を支えるという気持ちを持って欲しい」と,医師全体の団結を求めた.そのうえで,病院勤務医と診療所医師の接点をそれぞれの医師会で強化するよう提案.日医としては,「活動をより透明化し,すべての国民に理解されるよう,女性医師を含む病院勤務医の労働環境の改善に最善の努力をする」と述べた.
日医勤務医委員会報告
泉良平日医勤務医委員会委員長より,平成二十─二十一年度の諮問「医師の不足,偏在の是正を図るための方策─勤務医の労働環境(過重労働)を改善するために─」に対する答申概要の説明がなされ,最後に,「勤務医の医師会中枢への参画を通して,多くの勤務医の意見を会務に生かしていくことが重要である.勤務医の抱える諸問題を,医師会の最重要課題として正面から解決に取り組むことは,医師会の社会的使命であり,医師の大同団結につながる」と結んだ.
女性医師問題に関するアンケート調査報告
望月善子栃木県医師会勤務医部会理事より,県内女性医師の勤務環境調査の結果が報告された.院内保育など設備・制度面は三年前と比べてほとんど向上しておらず,非常勤の女性医師のうち常勤を望まない人が約四分の一を占める.子育て面で,院内保育所があっても利用していない人が六割もおり,保育時間と勤務時間が合わないという理由が多く,支援制度と勤務実態とのミスマッチが明らかになった.「労働環境を整備するための継続支援が必要だが,多様な生き方を望む人が増えるなか,モチベーションを保てる制度も整えなくてはならない」と述べた.
特別講演2
石原謙愛媛大学大学院医学系研究科教授が,「すぐに役立つ勤務医のための医療と経済の基礎知識─そして必要なのは産業論的戦略行動─」と題して,講演した.「日本の医療は国民の安心だけでなく産業も守っている」「日本の医療制度は世界最高のシステム」「だまされてはいけない日本に不要なDPC」「民間保険が国民と医療人と産業に壊滅的打撃」「保険書類の自動化に潜む問題点」「医療情報を客観的に見ると日本の医療費総額は一・五倍に」などについて,豊富なデータに基づいて,分かりやすく解説した.
次期担当県あいさつ
次期担当県の岩城勝英富山県医師会長から,平成二十三年十月二十九日(土)に富山市内で開催を予定しているとの案内があった.
ランチョンセミナー
尾身茂自治医科大学地域医療学センター公衆衛生学部門教授が,「新型インフルエンザ・総括」と題して講演し,直面した主要な問題点や今後の対策として五つの提言を述べた.
シンポジウム1
「医療再生の新しい取り組み」をテーマに,(1)安心に包まれた暮らしを自分たちの手で守るために(2)地域医療を守り健康長寿のまちづくりをめざして(3)地域医療を守り育てる住民活動の集いの経過説明(4)社会が求める医療のあり方(5)医療学の義務教育導入─について,地域医療を支える市民団体の代表など各分野からの発表があり,その後のディスカッションでは活発な質疑応答が行われた.
シンポジウム2
「今,勤務医に求められる“医療連携”とは」をテーマに,(1)地域を守るための取組み─地域における救急医療─(2)院内連携:男性医師─女性医師のチーム連携(3)男女共同参画という連携からはじまる病院環境の整備(4)離島診療所が必要とする医療連携(5)がん治療における在宅医療連携─について,それぞれの立場から発表が行われ,特別発言として,玉木朝子栃木県難病団体連絡協議会会長/衆議院議員が発表を聞いた率直な感想を述べた.ディスカッションでは,活発な質疑応答があった.最後に,コメンテーターとして,三上裕司常任理事から個々の発表に対してのコメントがあった.
栃木宣言採択
栃木宣言案は,一部文言の修正を望む意見が出されたため,その場では採択されず,栃木県医師会と日医勤務医委員会で改めて協議し取りまとめたうえで,十一月十九日に開催される都道府県医師会勤務医担当理事連絡協議会で発表されることになった.
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