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第1185号(平成23年1月20日) |
大学病院総合診療科の行方
順天堂大学医学部総合診療科准教授 内藤俊夫
順天堂大学では,昨年六月に全国大学病院総合診療部連絡協議会を主催した.本会では全国六十七の大学総合診療部(科)にアンケートを行ったが,これにより総合診療部の業務の施設による差異が大きいことが浮き彫りにされた.外来診療のみで入院診療を担当しない施設が五四・五%と過半数を占めていた.都市部では,主な業務を「教育」とする施設が多いが,地域の国立大学では「地域医療」に重点を置くことが少なくない.
順天堂大学医学部総合診療科での業務は,一般総合外来・入院診療,感染症診療,人間ドックなど多岐にわたる.私の外来では,いわゆるプライマリケアの患者より,他院や他科で診断がつかなかったために紹介されてきた患者が多い.また,全身疾患であるHIV感染症患者の診療も大切な仕事である.
これらの業務の多様性から,旧日本総合診療医学会の「日本プライマリ・ケア連合学会」への合併に違和感を持った大学病院総合診療医も少なくない.つまり,「我々の業務はプライマリケアだけではない」との主張である.このため,新たに「日本病院総合診療医学会」も結成されており,二つの学会が併存する状態となっている.病院総合診療医学会は「病院総合診療認定医」の認定を開始しており,「日本プライマリ・ケア連合学会」が予定する病院総合医の専門医認定にも少なからず影響するであろう.
世界最高の病院と言われる米国メイヨークリニックでは,一般クリニックの優秀なプライマリケア医と大学教官が協力して働いている.また,大学教官がプライマリケア医の認定医更新のための講習を行い,そこにはベテラン開業医が集まってくる.プライマリケア医のアートと,大学病院総合診療医のサイエンスの融合である.今後我々も,このようなシステムの構築を目指すことが必要だと考えている.
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