日医ニュース
日医ニュース目次 第1189号(平成23年3月20日)

勤務医のひろば

地方における心臓外科を考える
山口県立総合医療センター 心臓血管外科診療部長 壷井英敏

 私が勤務している病院は山口県のほぼ中央に位置する三次救急病院である.
 山口県の特色として大都市はなく,十万人程度の市が点在している.
 山口県の年間の心臓,胸部大血管手術件数は内科治療の拡大により減少し,現在は六百例ほどになっている.これを七施設で行っており,そのすべてが地域の救急基幹病院である.当県においても他県と同様,地方医師の減少に伴い,少数の医師で救急医療に対応している.
 現在,学会を中心として全国で心臓血管外科の集約化に関して議論されているところである.
 もし当県においても縮減することとなれば,点在する市町間での患者搬送のリスク等の不利益が生じてくるであろう.少人数であるからそれはそれで良いと言う意見もあるが,これは暴論である.心臓血管外科手術を行っている病院は二─三次救急であるため,あらゆる救急患者を受け入れている.心臓血管外科がないことより,その受け入れが制限されることになれば,地域の救急体制の崩壊を招きかねない.ただし,山口県でも今年よりドクターヘリの導入があり,このことはわずかであるが解決の糸口になるかも知れない.
 ただ,心臓血管外科削減を,医療レベルの低下の危険性という理由で全国一律に進めて良いか疑問を感じるものである.
 当県においては,すべての施設でスタッフは熟練されており,毎年の手術成績も全国平均以上の成績を上げている.地域においてはそれぞれの特色があり,例えば症例数だけではなく,数年の累積における成績も考慮した基準など,地域ごとの基準があっても良いのではないかと考える.
 財政の厳しいなか,採算不良の観点からも心臓血管外科の維持は難しいかも知れないが,地方における医療に行政からのさらなる援助が期待されるところである.

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