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第1197号(平成23年7月20日) |
女性医師の多様性と支援策
新潟市民病院副院長 井和江
医師国家試験合格者の三分の一を女性が占める現在,多様で優れた女性医師が子育て中も医療現場で活躍出来る環境づくりこそ,女性医師のキャリア形成を促し,医師不足解消の有効策となる.二〇〇八年に厚生労働省はさまざまな女性医師支援策を提言したパンフレットを全国に配布した.
新潟市民病院は三次救急を担う基幹病院であるが,初期研修医二十四名のうち女性が十三名と過半数を占め,一年次は十二名中八名が女性である.女性シニアレジデント六名の専攻は救急科二名,心臓血管外科,整形外科,病理診断科,内科各一名で,若い女性医師の活躍分野は実に多様化し,頼もしい限りである.
一方,常勤医九十三名中,女性医師は五名に過ぎず,育児は両親や他人に託し,男性医師と同等に勤務出来る条件と意思をもたなければ常勤として働きづらい現実がある.当院でも妊娠・育児中の当直免除などの内規や正規職員に対する育児休業・育児短時間勤務制度は存在するが,ただでさえ過重労働となっている同僚医師に対する負担増を考えると,なかなか利用出来ない.
夜間保育や院内保育・病児保育などの育児支援策の整備を求める声もあるが,仕事と生活を調和させるワークライフバランスを求める若い医師も多い.当院では短時間の非常勤雇用,職場復帰支援制度の他,医師に限らず働く女性にとって最もニーズの高い病児保育室の開設を検討中である.
女性医師が生涯にわたり多様な働き方を選択しキャリアを継続するには,勤務医全体が働きやすい職場やシステムづくりが求められる.比較的医師数に恵まれている当院でも過重労働は避けられず,複数主治医制の導入や時間外勤務の是正には医師数の充足とともに,医師や社会の意識改革も必要である.
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