|
第1205号(平成23年11月20日) |
勤務医座談会(最終回)7月13日開催
「勤務医が果たす社会的使命〜医師会の役割と勤務医の役割〜」をテーマに
勤務医の社会的役割
泉(司会) 勤務医の社会的役割についてご発言ください.
鈴村 社会的役割として,患者さんのモラルを上げるということが一つあると思います.
例えば,救急外来をやっている時は,毎日決まった時間に来る生活保護の人や,必要がないのに救急車に乗ってくる人が多いということを感じていましたが,こういった受診行動は,勤務医の労働環境を悪化させている一因にもなっており,また,医療費を圧迫していることもあるので,救急車は必要な時に乗ってくださいなどと,テレビCM等も含めて何らかの形で患者さんに伝えていくことが重要だと思います.
内藤 勤務医が困っていることを,勤務医から医師会に上げて,医師会がそれを患者側に伝えてくれるということは,ありがたいと思います.
自分の都合だけで夜に病状説明を聞きに来る人たちを何とかして欲しいという話などを,医師会として患者さんに伝えてくれて,ポスターでも作ってくれれば,少しは改善すると思います.
安達 それはインパクトがあります.適切な医療が行われないと,患者さん自身がどんどん自分たちの首を絞めていくことになると思うし,医師も疲弊してしまいます.どちらにもメリットがないと思うのです.
三ツ木 簡単に夜間,病院を受診出来る状況になって,医師は救急医療で疲弊していると思います.患者さんがお手軽に救急を受診出来るというところを,何とかしなければならないと思います.
日医への勤務医の主体的な参加と医師会改革
泉 日医への勤務医の主体的な参加と医師会改革について,お話しください.
伊藤 新潟県医師会の理事は過半数が勤務医です.以前,若手勤務医の意見を聞こうということで理事会に呼ばれて発言しましたが,役員の方々のほとんどは勤務医ではあるけれども管理者です.経営的な視点の話が出ると,勤務医の医師会の先生が管理者の目線になってしまうように感じることもありました.
勤務医であろうと開業医であろうと,良い医療を行いたいということについて何の異論もないので,質の高い医療,患者の自立を支援するために,さまざまな制約条件の中で,何を行うかという話を,もう少し平場の議論で継続していかなければならないと思います.
内藤 私は,患者との良好な関係を取り持つために,医師と患者の間に医師会に入っていただければと思います.例えば,広報的な部分で,新聞に「日本の勤務医が患者さんにお願いしたいことの十項目」などというのが出れば,ありがたいと思います.それこそ,病状説明の時はなるべく昼間に来てくださいとか,具体的なことで良いと思うのです.
安達 患者さんへの啓発ということで,勤務医の大変なところを背負って,日医が積極的に発言していただければ,勤務医をバックアップしてくれていると思えることなので,一つポジティブアプローチになると思います.
勤務医と医師会との関係でいうと,恐らく病院の管理者レベルの先生が,疲弊している勤務医の意見をうまく拾って,医師会とどうやって補完し合うかということが大事なテーマだと思います.
三ツ木 勤務医は,各病院において,それぞれの特殊な事情で困っているところもたくさんあるので,医師会の勤務医委員会に参画している立場の方が,個々の事情を知るのは難しいだろうと思いますし,また,病院長が全ての問題を把握しているわけでもないと思います.
そういった環境の中で,それぞれが抱える問題等をどういう仕組みで,どのように集約しながら,解決していくのかということが課題だと思います.
内藤 結局,勤務医が声を上げたことによって,医師会が何をしてくれるのかということだと思います.診療報酬を含めて,その声をどこにどのように跳ね返すことが出来るかが問題だと思います.
三ツ木 この十年で病院の事情として変わったことの一つは,病院機能評価制度だと思います.いろいろな委員会が出来て,雑用も増えましたが,病院機能評価が病院を変えた部分もありました.
また,がんの領域でいえば,がん対策基本法が出来て,病院が大きく変わりました.今,医療基本法というのを作ろうという機運もあるらしいのですが,医師会からも働き掛けを行っていただきたいと思います.
内藤 勤務医を正確に評価して,それが給料に反映されるような勤務評価の項目はあってもよいと思います.
勤務医の立場を改善する方向に医師会が動いてくれるのであれば,「我々はこんなことも困っています」と,もっともっと意見を上げるでしょう.私たちが意見を言って,それが実際に跳ね返ってきたことが分かれば,意見は次から次へと出てくると思います.
診療報酬に関係するのが難しければ,医師会が「勤務医に優しい病院はここです」ということを認定するのも面白いでしょう.
あとは医師会が勤務医を守ってくれるかどうかというところも重要です.例えば裁判になった場合や診療報酬で問題があった場合に,医師会に相談すれば味方についてくれるという思いが,大学病院の若手医師にはないので,そういう部分がもう少し分かりやすくなればいいと思います.
伊藤 細かいことですが,個人にフィードバックするインセンティブは危険だと思います.院長の裁量で,その病院に必要な役割の範囲であれば構わないと思いますが,どの病院にも通用するような話はどうかという気がします.
鈴村 日医のホームページを見ましたが,e─ラーニングや論文検索システムなどが充実していて,理想とされるところがたくさんあると思いました.
勤務医座談会も,二年に一回ではなく,回数が増えれば良いと思いますし,過去の座談会の記録もホームページで見ましたが,過去に言われたことがその後にも言われていて,変わっていないと思ったところも正直ありました.
勤務医座談会がこれからも続いていくのであれば,過去の参加者と新しい参加者がタイアップして変化を確認し,こういうことが変わってきたと分かればありがたいです.
三ツ木 勤務医全体の割合からすると少ないかも知れませんが,医師会員の約五〇%は勤務医です.今ある勤務医の勢力が,どのように医師会の中で組織だって活動していくかということを考えないといけないと思います.
そういう意味では,勤務医の中にもさまざまな立場があるので,それぞれの立場の人を集めて,その中で同じ立場の人で話し合ったり,違う立場の人で話し合ったりするという多くの機会が必要だと思います.
伊藤 医師会に何のために集まっているのかということだと思います.医師は医師のために医療をやっているわけではないですし,そこのところがはっきりしないから,何となく利益を主張する政治集団のように見られてしまっているのだと思います.
勤務医だから,開業医だからではなくて,さまざまな立場の人がさまざまな意見を主体的に言わないことにはどうしようもないと思っています.
私の病院でも医師会に入っていない医師が入らない理由は,「何のメリットがあるのか」とか,そういうことばかりです.何かよって立つ一つの理念のようなことがあってしかるべきではないかと思うので,そういう話が出来ないと議論にならないと思います.
安達 勤務医の参画を進める第一歩としては,例えば座談会のような機会を増やすということも大事だと思いますし,諸先輩に当たる先生方が推薦する若手勤務医らをうまくピックアップしてもらって,定期的に交流というか,意見を聞く場を設けていただくことなどからまず定着していけば,ゆくゆくは医師会は勤務医の味方をしてくれるところなのだと分かるのかと思います.
内藤 意見を言う機会をたくさん作ってもらえればと思います.その方法はいろいろあると思いますが,例えば勤務医委員会の下にワーキンググループを設置し,管理者でない勤務医がメーリングリストを使って,メール会議をして,その意見を吸い上げるとか,意見を言えることが医師会を良くすることでもあるし,医療を良くすることでもあると思います.
三上 現場からの貴重なご意見をいただき,ありがとうございました.本日寄せられましたご意見等を,今後の会務に活かしていきたいと思います.
泉 本日は長時間ありがとうございました.
勤務医座談会 出席者 |
泉 良平【司会】(日医勤務医委員会委員長・富山県医副会長)
安達 昌子(慶大医学部助教・野中医院)
伊藤 英一(新潟県立新発田病院内科部長)
鈴村 水鳥(名鉄病院)
内藤 俊夫(順天堂大医学部准教授)
三ツ木健二(国家公務員共済組合連合会浜の町病院部長)
三上 裕司(日医常任理事) |
|