日医ニュース
日医ニュース目次 第1207号(平成23年12月20日)

勤務医のページ

平成23年度全国医師会勤務医部会連絡協議会
「勤務医の働き方と生きがい(よりよい就労環境を求めて)」をメインテーマに

勤務医のページ/平成23年度全国医師会勤務医部会連絡協議会/「勤務医の働き方と生きがい(よりよい就労環境を求めて)」をメインテーマに(写真) 平成二十三年度全国医師会勤務医部会連絡協議会(日医主催,富山県医師会担当)が十月二十九日,富山市内で開催された.
 昨今の救急医療の崩壊,地域中核医療を担う病院勤務医不足,更には三月十一日に起こった東日本大震災等を踏まえて,勤務医離れ,医師不足をこれ以上広げないために「勤務医の働き方と生きがい」をメインテーマに,「よりよい就労環境を求めて」をサブテーマとし,来賓に石井隆一富山県知事,森雅志富山市長を迎えて,全国から四百五十名が参加し,協議を行った.
 冒頭にあいさつした原中勝征会長(横倉義武副会長代読)は,東日本大震災において日本全国の医師会並びに医師の方々からJMATの派遣,義援金の寄付など多大なるご支援・ご協力を頂いたことに感謝の意を示した上で,「政府の長年にわたる医療費抑制政策,新医師臨床研修制度の導入,訴訟リスク等を打破し,より良い医療環境を構築するためには,医師が医師としての力を最大限発揮出来る環境を整備することが重要」と述べた.
 次にあいさつした岩城勝英富山県医師会長は,「勤務医と開業医が国民医療向上のため,共生して事に当たらなければならない」と強調するとともに,「本協議会が勤務医の大同団結,また就労環境の改善に向けた諸問題の解決につながればよい」とした.

勤務医のページ/平成23年度全国医師会勤務医部会連絡協議会/「勤務医の働き方と生きがい(よりよい就労環境を求めて)」をメインテーマに(写真)特別講演1「日本医師会の医療政策について」

 横倉義武副会長が,東日本大震災への対応,前回診療報酬改定の影響と今後の課題,社会保障と税の一体改革への意見,医師養成と質の保証,勤務・生活環境の改善への取り組みについて講演した.勤務医の実状については「勤務医の就業環境や生活習慣には改善の余地がある.医療機関としての組織的取り組みが必要であり,医療機関での産業医活動を活性化させる必要がある」とした.

特別講演2「勤務医の処遇改善」

 嘉山孝正独立行政法人国立がん研究センター理事長・総長・中央病院長は,日本では,医療の質が患者満足度で判断され,医師の知識や技術が適切に評価されていないこと,世界最低レベルの医療費と教育費で世界一の医療を提供していることなどを説明.国民にもそういった事実を理解してもらい,国民が医療を育成する社会・文化をつくる必要があるとした.

報告1・報告2

 泉良平日医勤務医委員会委員長が「日本医師会勤務医委員会報告」を行い,医師会について勤務医が知らない現状があること,また日医はミッションやビジョンを勤務医に十分に説明していないこと等を指摘した.
 望月泉日医勤務医委員会副委員長より,「東日本大震災―現地からの報告・被災地への医療支援―」が報告された.
 地元岩手県での迫りくる津波の恐ろしさを映像と写真を用いて解説し,大規模災害時には医療・介護・福祉などが共同で県単位の派遣チームを結成し,日頃から訓練しておくことの必要性を訴えた.

基調講演「若い外科医の過重労働と改善のための方策」

 富永隆治九州大学大学院医学研究院循環器外科教授は,何かを変えなければ状況は良くならないとし,外科医の労働環境改善にはナースプラクティショナー(NP)やフィジシャンアシスタント(PA)のような中間職種を創設する必要性があるとした.

パネルディスカッション「よりよい就労環境を求めて」

 パネルディスカッションでは,「大学病院の勤務環境と提案」(土岐善紀富山大学附属病院呼吸器一般外科診療教授),「地域の救急医療を維持するために〜急性期病院における勤務環境の課題〜」(臼田和生富山県立中央病院内科部長),「医師の子育てを支援するための取り組み」(丸山裕美子黒部市民病院耳鼻咽喉科部長),「医師の健康がよりよい医療に不可欠」(川人博川人法律事務所弁護士)の四つの講演が行われた.
 その後の討論では,県内の大学病院や救急医療の現状,病院の子育て支援が紹介された他,川人弁護士は,過労死・過重労働につながる「応召義務」の法改正が必要と訴えた.質疑応答では,フロアから多くの意見・要望が出され,活発な討論が行われた.

富山宣言

 四つの目標を掲げた宣言(下掲)が全会一致で採択され,協議会は終了となった.

富山宣言

 地域医療・急性期医療などを担う勤務医の役割は日増しに高まっている.しかしながら,その就労環境の厳しさは旧態然としており,勤務医離れはとどまることなく,残された勤務医に更なる過重労働を強いる結果となっている.そのような状況にあっても,東日本大震災では勤務医は率先して医療活動に加わり多くの被災者に医療を提供してきた.医療は公共のものであるという認識を踏まえ,勤務医の疲弊をこれ以上に増やすことなく,個々の能力を遺憾なく発揮できるよう就労環境の改善に向けて次のことを宣言する.

一,勤務医は各々を尊重し助け合い,医療活動のみではなく医政活動にも積極的に参加し,医療が崩壊の危機にあることを広く社会にアピールしていくこと.

一,我々医師は,より良いワークライフバランスを求めて,女性医師のエンパワーメントを促し,男女共同参画社会推進におけるリーダー的存在となること.

一,政府は医療費抑制策を改め,医師の養成・確保に真剣に取り組むこと.

一,政府・病院開設者は,勤務医が医師の使命感に基づいて過重労働を耐え忍んでいる現実を理解し,早急に就労環境の改善に着手すること.

平成23年10月29日

全国医師会勤務医部会連絡協議会・富山

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