日医ニュース
日医ニュース目次 第1213号(平成24年3月20日)

勤務医のページ

病院における勤務医の負担軽減策に関するアンケート調査結果報告
宮城県医師会常任理事(勤務医担当) 藤田直孝

 二〇一〇年度の診療報酬改定は,命題の一つに勤務医の待遇改善が挙げられていた.本会勤務医委員会では県内の病院にアンケート調査を行い,十カ月を経過する時点での実態把握を試みた.

アンケート項目

Q1:病床数,勤務医師数,設置主体,救急医療取り扱いの有無
Q2:二〇一〇年度診療報酬改定による四〜九月分の収益の変化
Q3:二〇一〇年度,勤務医師の基本給引き上げを実施したか
Q4:医師に対する,本給,時間外手当など法律で定められた以外の手当ての支給
Q5:二〇一〇年度,新たに医師に対し支給した手当て
Q6:二〇一〇年度改定で「病院勤務医の負担軽減及び処遇改善に係る計画策定」を要件とする八項目中,算定している加算(複数回答)
Q7:医師の勤務状況把握法
Q8:二〇一〇年度改定において実施された病院勤務医の負担軽減策の効果
Q9:医師の充足状況
Q10:医師の求人の容易さ
Q11:医師の採用ルート(複数回答)
Q12:勤務医の負担軽減で実施している対策(複数回答)
Q13:その他,勤務医の負担軽減について,予定している対策,意見

集計結果

 全百四十七施設中九十八施設(約六七%)から回答を得た.回答施設の病床数は百未満が三十六施設,百以上三百未満が四十三施設,三百以上が十九施設であった(勤務医数は三千二百七十名,うち常勤二千四十六名,非常勤千二百二十四名,女性医師一三・三%).
 国公立,公的病院が三十七施設,その他が六十一施設であった.救急を取り扱う施設は六十六であった.
 平成二十二年度の収益について,増・不変・減を全体,入院,外来別にみると三十六/三十四/二十四,三十七/三十三/二十四,二十六/四十五/二十三という結果であった.
 平成二十二年度に基本給の引き上げを行った施設は三十一,時間外など以外の何らかの手当を支給した施設は二十三(支給せず七十一)であった.
 文書料手当,救急車取扱手当,回診手当,文書補助加算手当,指導医手当,拘束手当,救急勤務医手当,分娩手当,ハイリスク分娩手当,医師加算手当など新たな手当を支給したのは六施設であった.
 計画策定要件の中では,急性期看護補助体制加算(二十二),医師事務作業補助体制加算(二十一),入院時医学管理加算(十三),栄養サポートチーム加算(十二)の算定が多かった.いずれも未算定の施設が五十五みられた.
 医師の求人は六施設を除き困難(非常に困難が三分の一超)と回答していた.採用ルートは医局派遣(六十五)が最多で,民間人材紹介会社(四十),自院ホームページなど(三十八),知人の紹介(三十七)と続いた.
 採用した負担軽減策としては,医師事務作業補助者の配置(三十),他医療機関との連携推進(二十九),業務に対する手当の支給(二十三),時間外勤務・当直などの制限(二十),院内保育の実施(十九),IT化の推進などインフラ整備(十九)の順であった(図)

勤務医のページ/病院における勤務医の負担軽減策に関するアンケート調査結果報告/宮城県医師会常任理事(勤務医担当) 藤田直孝(図)

まとめ

 今回のアンケートから,診療報酬改定後,各病院である程度勤務医の待遇改善に対する取り組みが行われたことが分かる.二十二年八月に日医から発表された「レセプト調査報告」によれば,病院の前年同期と比較しての総点数は,三・六二〜七・八四%の伸び率であった.勤務医の待遇改善に対する取り組みの原資として,この収益増が寄与していることは間違いなかろう.一方,新しい加算を取れていない施設が六〇%近くあり,改定後収入減となった病院が二六%存在するのは重い事実である.
 医師の確保は相変わらず困難な状況である.医学部新設など単純な医師数増加対策で解決出来る問題ではなく,実情を理解した効果的な施策が望まれる.日医の果たすべき役割は大きい.現在,医師不足とされる多くは勤務医不足を意味している.勤務医の労働環境改善,給与体系の見直し,コメディカルとの役割分担,訴訟リスクの高い診療科への対策などを推進し,診療所医,病院勤務医が共に高い志を保ちながら医療を支える体制を確立することが急務である.

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