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第1221号(平成24年7月20日) |
「寝屋川市感染症ネットワーク」の立ち上げ
(財)結核予防会大阪府支部大阪病院長 相良憲幸
寝屋川市は大阪府の北部(北河内地区)に位置する人口約二十四万人の特例市で,当院を中心に(社)寝屋川市病院協会に参力する全十三病院が,ソーシャルネットワークシステム(SNS)を利用した地域の感染症原因菌の動静(アンチバイオグラム)の把握と,大阪に多い肺結核とHIV感染症を始めとする感染対策指針と感染対策資源の共有化に取り組んでいる.
感染症診療において,地域のアンチバイオグラムの把握は初期治療抗菌薬の選択などに必須な条件の一つであるが,大学附属病院や大病院での取り組みが多く,「一つの市の全病院が参加し,各病院の日常診療での活用を目指す取り組み」は多くない.
私たちは平成二十三年六月より,SNSを利用して市内全十三病院でのMRSA,VREなどの薬剤耐性菌の分離や肺結核の新規登録者数の月別の統計を取ることから始めた.微生物検査体制が各病院で異なるため,当初は情報収集に手間取ったが,現在では,全病院の前月分の報告が月初めに集まり,まとめの月報を各病院にフィードバックし,活用頂いている.
また,「自分を守り患者さんを守るための身近な病院感染対策」として,全十三病院の感染対策のリーダーが参加する研修会を定期的に開催し,肺結核とHIV感染症を始めとする病院感染対策の知識と実技の共有化に努めている.更に,HIV迅速診断キット,感染予防薬などの感染対策資材の共同購入と全病院での配備,加えて職業感染発生時の初期診療体制なども整備している.
今後は市医師会・保健所とも協働して,市内全域での感染症診療ネットワークとして充実させ,地域感染防止対策ネットワークとも相互補完して住民の健康な生活に貢献していきたい.
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