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第1227号(平成24年10月20日) |
ワークライフバランス
埼玉医科大学総合医療センター 消化器・肝臓内科 名越澄子
東京都医師会「医学生,研修医等をサポートするための会─これからのワークライフバランス」で基調講演を行うこととなった.
本会は,平成十八年度から日本医師会女性医師支援センター(平成十九年度までは男女共同参画委員会)が各都道府県医師会と共催し,女性医師が生涯にわたり能力を十分発揮出来るよう支援する「(女子)医学生,研修医等をサポートするための会」の一環として行われる.
今年度からはその対象を男子学生等にまで広げた.職場や家庭における男性の理解が不可欠であり,性別を問わず,医学生や研修医の時期から男女共同参画やワークライフバランスについて明確に理解することが求められるとの認識からである.
しかし,この「ワークライフバランス」は曖昧(あいまい)な言葉である.仕事と家事・育児あるいは介護を両立させるため,勤務時間を短縮する場合や,私生活を優先するため,非常勤医を選ぶ場合にも使われる.
若い世代は,人生には仕事以外にも重要なことがあると気付いているが,それが何かをよく考える必要がある.
それは仕事と私生活を天秤(てんびん)にかけるというイメージではなく,仕事,自分の心身の成熟,家族や友人を含む人間関係,そして社会貢献,これらの視点から,各ライフステージに応じて,自分の価値観を基準に,満たされていない分野に関心を向け,生き方を修正していくということである.
費やす時間の長さは重要ではない.また,仕事の水準を下げ,向上心を捨てることではない.仕事以外の分野で充実感があれば,自分の人生に誇りを持ち,仕事にも更に集中出来る.
この意識改革が最も重要かつ困難である.そして,若い医師を育てる立場の方々にも,真の「ワークライフバランス」を理解して頂くことを願う.
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