日医ニュース
日医ニュース目次 第1237号(平成25年3月20日)

勤務医のひろば

“日常の中の非日常”から“患者と医者の立場”を考える
国立病院機構福岡東医療センター 副院長 江崎卓弘

 一月中旬,九州福岡では珍しいこの冬一番の雪に見舞われた.
 朝起きると周りは雪景色.ただ主要幹線道路のダメージはそれほどでもなさそうなのでいつも通りマイカー通勤を考えたが,前夜の酒宴のなごりもあり地下鉄で天神バスセンターへ向かった.途中,車内の乗客は通常の二〜三割増し.バスセンターでは,九州自動車道が不通,運行しているのは自分が目的としている赤間線だけという.その後,目当てのバスが通る都市高速道路も不通となったが迂回(うかい)路で運行するというアナウンスあり,たまにはこんなこともいいかと待つことにした.しかし三十〜四十分経ってもバスは来ないため,急遽(きゅうきょ)博多駅に向かいJRを使うことに変更.ホームはたくさんの人だかり,予定時刻から二十〜三十分遅れの電車に何とかもぐり込む.
 各駅停車の車窓から朝日に映る吉塚駅周辺,水を打ったような多々良川とその周囲の眺め,名島から香椎にかけて朝日でキラキラ光る雪景色,新宮から古賀で初めて観る新しい駅など,実に素敵(すてき)な風景を満喫した.いつもはあの南側の国道を通勤する日々で,線路側のこうした景色を観ることはない.まさに日常の中の非日常を経験した.
 車窓のくもりをぬぐいながらふと考えた.
 日常業務で『患者目線』とか『患者の立場』といったことを耳にするが,患者と医者の間も“立場を変えて”ではなく,“立場が変わって”初めて気がつくことがあると.
 病院に到着するまで二時間半もかかったが,ちょっとした小旅行を楽しんだ.

このページのトップへ

日本医師会ホームページ http://www.med.or.jp/
Copyright (C) Japan Medical Association. All rights reserved.