日医ニュース
日医ニュース目次 第1255号(平成25年12月20日)

勤務医のページ

平成25年度全国医師会勤務医部会連絡協議会
メインテーマ「勤務医の実態とその環境改善─全医師の協働にむけて」

勤務医のページ/平成25年度全国医師会勤務医部会連絡協議会/メインテーマ「勤務医の実態とその環境改善─全医師の協働にむけて」(写真) 平成二十五年度全国医師会勤務医部会連絡協議会(日医主催,岡山県医師会担当)が十一月九日,「勤務医の実態とその環境改善─全医師の協働にむけて」をメインテーマとして,岡山市内で開催され,全国各地より三百九十三名が出席した.
 冒頭の横倉義武会長のあいさつ(今村聡副会長代読)では,「本協議会では医療におけるさまざまな問題を勤務医の立場から協議しているが,その成果として採択された宣言は勤務医からの貴重な提言として,関係大臣や関係国会議員に届けている.現在の医療には喫緊の問題が山積しているが,その解決のためには全ての医師が参加して活動を推進するための基盤が必要であり,その基盤としての役割を担うのが医師会であると考えている.日医の公益的活動の深化・推進には勤務医の協力が不可欠であり,より一層の支援をお願いしたい」とした.
 つづいてあいさつした石川紘岡山県医師会長は,「岡山県は勤務医部会を設立して二十三年目となり,勤務医会員も県医師会員の五九・二%となっている.執行部役員二十名中九名が勤務医であり,二名の副会長も病院長経験者の勤務医である」と述べ,医師会の中で勤務医の果たす役割の大きさを強調した.

特別講演1「日医の直面する課題」

 今村副会長は,地域の特性を顧みず,国の方針や計画を画一的に地域に落とし込む従来のトップダウン方式では,医療機関や医師の偏在,住民の高齢化や疾病構造の差異などへの対応は出来ず,地域医療を再興するためには,かかりつけ医機能を中心としたボトムアップ型の体制整備が必要だと指摘.更に,かかりつけ医については,その社会的機能を評価する必要があるが,その際には,診療の評価と分けて考えるべきであり,これを同一に考え,人頭払いのような仕組みを考えることは誤りであると強調した.その他,同副会長は,医療界が直面する課題を解決するための医師会組織強化の必要性や,日医の勤務医支援の方針,その具体的な取り組みについても言及した.

特別講演2「日本の医療をめぐる課題:チーム医療を中心に」

 永井良三自治医科大学長は,「米国の医療は市場原理であるが,西欧・北欧では国立や自治体立の病院等(公的所有)が中心で,政府の強制力によって改革が進められている.日本では,医師が医療法人を設立し,病院等を私的所有で整備しているため,国や自治体などの公立の医療施設は全体の一四%,病床で二二%に過ぎず,日本では政府と民間が互いの立場を尊重し合い,日本独自の方法で解決していかなければならない」とした上で,これからの日本の医療については,「地域完結型の医療とし,病床の機能分担,急性期,回復期,慢性期など高度急性期から在宅介護までの一連の流れをつくった上で,医療提供者間のネットワーク化,医療・介護のネットワーク化を図る必要がある」と説明した.
 また,医師数については,「医師は必ずしも不足しておらず,人口十万人当たりの脳外科医はアメリカの五倍,胸部外科医は三倍,整形外科医は一・七倍いる.日本の問題は医師不足ではなく,医療供給体制の問題である」と述べた.
 更に,チーム医療については,その推進はあくまでも患者のためでなければならないとするとともに,チーム医療の推進に関する検討会では,看護師が特定行為を行うためには研修機関において一定の研修を受けることが義務づけられる方向で検討が進められているとした.

日医勤務医委員会報告

 泉良平勤務医委員会委員長より,横倉会長からの諮問「勤務医の組織率向上に向けた具体的方策」に対する答申,郡市区等医師会における勤務医に係る調査の実施,勤務医座談会の開催等,同委員会の取り組みが報告された.

パネルディスカッション「様々な勤務医の実態とその環境改善を目指して」

勤務医のページ/平成25年度全国医師会勤務医部会連絡協議会/メインテーマ「勤務医の実態とその環境改善─全医師の協働にむけて」(写真) (一)「大学病院における勤務医の実態─大学病院から─」(合地明岡山大学病院教授),(二)「国立病院機構における勤務医の実態〜岡山医療センターでの現状と取り組みを踏まえて〜─公的病院から─」(佐藤利雄岡山医療センター副院長),(三)「勤務医の光と影〜勤務医は何を求め,病院はどう応えるべきか─大規模私的病院から─」(松岡孝倉敷中央病院糖尿病内科主任部長),(四)「岡山市立市民病院における勤務医の実態とその環境改善に対する取り組み─自治体病院から─」(今城健二岡山市立市民病院副院長),(五)「人口過疎地における取り組み─山間部の中小病院から」(金田道弘金田病院理事長)─の五講演が行われ,質疑応答の後,小森貴常任理事が総括を行った.

フォーラム「岡山からの発信─地域医療人の育成」

 引き続き,行われたフォーラムでは,(一)「日本の医療を飛躍させる医師育成プランのグランドデザイン」(山根正修岡山大准教授),(二)「良い医師をみんなで育てる」(糸島達也岡山医師研修支援機構理事長),(三)「地域医療におけるヒトの育成」(佐藤勝岡山大大学院教授),(四)「女性がいきいきと働き地域貢献を果たす仕組みづくり」(片岡仁美岡山大大学院医歯薬学総合研究科医療人キャリアセンターMUSCATセンター長),(五)「岡山県医師会の活動」(神寛子岡山県医理事)─五講演が行われ,質疑応答に続いて,小森常任理事が総括コメントを述べた.

岡山宣言採択

 最後に,岡山宣言(別掲)が満場一致で採択され,協議会は閉会となった.

岡山宣言

 診療科による医師の偏在や地域での医師不足は,勤務医の不足によるところが大きい.診療報酬による勤務医の負担軽減など,国としての勤務医の環境改善の施策も進められているが,それにも拘わらず勤務医の置かれている状況は依然として厳しい.
 現状では,長時間の時間外勤務や,日勤に次ぐ当直そして翌日勤務などの過酷な状況があり,また大学病院では医師は教員として雇用され医療職として処遇されていない.さらに,勤務医が医師本来の業務に専念できるチーム医療が進まず,現政権下で最も重要視されている政策としての女性の活用についても,増加する女性医師の就労支援のための諸施策は十分でない.そして,これからの医療を担う勤務医は,幅広く多様なプログラムで育成して行かなければならない.
 勤務医の環境改善により,多くの医師を医療機関に確保し,我が国の疲弊した医療を正常化することは,急性期医療のみならず医療体制全般の改善に大きく貢献し,勤務医と開業医との協働も一層進むものと考える.
 国はこのような実態を良く理解し,その環境改善に努めるよう次のことを強く要望する.

一.労働基準法を遵守できる医師の勤務体制の整備
一.教育職である大学病院医師の医療職化
一.多職種との協働により医師業務に専念できるチーム医療の推進
一.女性医師の増加に対応した男女共同参画の推進と就労支援
一.多様なプログラムでこれからの医療を担う医師をみんなで育てる

平成25年11月9日

全国医師会勤務医部会連絡協議会・岡山

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