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第1261号(平成26年3月20日) |
日医勤務医委員会の委員として初めて活動した所感
東京医科大学教授・東京医科大学医師会理事 大久保ゆかり
私は今期の勤務医委員会委員として,初めて日医で実際に活動する機会を頂いた.
これは「指導的立場,意思決定機関への女性の参画」を達成するために平成二十三年度から始まった「二〇二〇・三〇」推進懇話会に参加したことがきっかけで推薦された.
当初はこれ以上の仕事を抱えるのは無理かとお断りしようと考えていた.しかしそれでは,いくら行政や医師会が女性医師支援を行っても何も変わらないと思い直し,どれだけ活動出来るか不安であったがお引き受けすることにした.
「勤務医の組織率向上に向けた具体的方策」をテーマに
私以外の委員は大学・病院経営や医師会活動に精通なさっている名立たる方々ばかりで,「自分がいるのは場違いでは?」と感じ,更に当初はその討論内容を理解するのも難しかった.それでも二年間でさまざまな日医の活動を見聞きする機会を頂き,医師会の重要性を改めて認識することが出来た.
的外れな点やご批判もあろうかと思うが,初めて日医の委員活動を経て率直な感想ということでご容赦頂きたい.
まず感じたことは,今更というか当然であるが医師にとって学事と保険診療は表裏一体であるということ.これらは医師の活動の根幹であり,どちらも不可欠である.
医師会や学会等の代表者が何度も行政と交渉を重ねるというご尽力のおかげで,初めて現場に則した保険点数に近づき,決定されていることを知らなくてはいけない.この点に関して勤務医は関心が低いことが多いように思う.
第二に医師会にまず参加して,勤務医の現状を自ら正確に伝える活動をしなければ何も変わらないということである.
今回の答申にもあるように,日医執行部に勤務医が必ず加わることにより勤務医の意見が取り入れられること,その活動を病院管理者が評価することが,勤務医が日医に参加するために重要である.何も評価されなければこの勤務医不足の多忙な中,あえて活動する者はいないであろう.
ではなぜ,病院管理者が評価しないか? と言えば,日医はいまだ開業医の意見が中心であると感じており,活動意義を積極的には見出せないからではないか.
医師が一つの組織にまとまる必要性とは?
実は勤務医は所属する大学や病院だけに守られているのではないが,日医に守られているという実感がないのが正直なところであろう.
従って,日医には医師全体を守るという視点で,一つの組織として問題解決を図ることが求められている.
既に医療事故調査制度や医療訴訟の問題などで医師会は大きな役割を果しているが,更に勤務医を含めた医師を守るためには病院と医師会との密な連携が必要である.ここで一つの団体として意見をまとめて交渉しなければ医師全体にとって不利益な結果となるのではないか.その必要性を明らかにすることも勤務医の参加を促すきっかけになるかも知れない.
勤務医における女性医師支援の難しさ
日医の男女共同参画委員会や女性医師支援センターによる活動は,女性医師支援に大きな役割を果たしている.しかし,それでもなお女性医師が勤務を継続していくには困難な状況が続いている.それは病院管理者からすれば,経営面から考えるとやはり負の人材と捉えざるを得ない状況だからではないか.
男女共同参画に対する男女ともの意識改革の遅れによる払拭(ふっしょく)出来ない不公平感,保険診療費抑制による病院経営の圧迫,また何よりも大学病院では医師は教員であり,医療職としての処遇を受けていないこと(平成二十五年度全国医師会勤務医部会連絡協議会における岡山宣言)などが複雑に絡み合い,女性医師の就業継続を困難にしている.このままでは男女とも勤務医は更に疲弊して,逃げ出してしまうのではないかと危惧している.
ここで日医には,これまでの活動から更に踏み込んで,病院における短時間勤務医師支援のための補助金政策など,実質的に病院経営をサポートする施策を提案して頂くことをお願いしたい.このような支援は経済基盤なくしては成功しない支援であることも事実である.
さまざまなことを考えさせられた委員会活動であり,貴重な経験であった.私のように初めて委員等に指名されて躊躇(ちゅうちょ)している女性医師が,一人でも多く医師会活動に参加することを切に願う.
また,今回の勤務医委員会の答申が日医の改革に繋(つな)がることを期待したい.
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