日医ニュース
日医ニュース目次 第1263号(平成26年4月20日)

勤務医のページ

平成24・25年度 勤務医委員会答申
「勤務医の組織率向上に向けた具体的方策」〜その1〜

 勤務医委員会(委員長:泉良平富山県医師会副会長)がまとめた,横倉義武会長からの諮問「勤務医の組織率向上に向けた具体的方策」に対する答申の概要を二回に分けて掲載する.
 なお,答申各章の内容は,執筆者である同委員会委員の意見がつづられており,必ずしも同委員会の総意を表すものではないことに留意されたい.

1.大阪府医師会に学ぶ勤務医組織化

勤務医のページ/平成24・25年度 勤務医委員会答申/「勤務医の組織率向上に向けた具体的方策」〜その1〜(写真) 大阪府医師会勤務医部会では,府内を十一の地域ブロック(二次医療圏)に分け,ブロック委員会(委員定数百九十名)を基盤として,選出された役員による常任委員会(常任委員四十二名,多忙な勤務医が参加しやすいよう,毎月第二・第四火曜日,十七時から定例開催)を年二十二回開催し,問題を短期間に解決するために意見交換を行っている.
 主な企画としては,(一)部会員の視野を広げることを目的とした「勤務医部会研修会」,(二)勤務医や病院に係る諸問題について,十一ブロックを大きく三つに分けて「ブロック合同懇談会」,(三)五大学医師会と二行政医師会との連携を図るための懇談会,(四)勤務医部会と府医師会役員との懇談会─等を開催している他,府医師会の各種委員会に委員を推薦している.
 現在,勤務医部会を通じた入会促進活動を重要視し,各病院の幹部でもある常任委員により,病院ごとに若い勤務医への入会促進活動を始めている.また,「研修医を対象とした広報活動を積極的に行うことにより入会促進を図ること」「医師会への入会手続き等を簡素化すること」が喫緊の課題となっている.

2.医療事故,特に診療行為に関連した死亡事例への対応

 平成二十四年,福岡県医師会では,全ての医療機関が「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」に参画出来る体制を立ち上げた.これは当該医療機関から連絡を受けると,県医師会が直ちに医師と看護師等で編成された調査分析支援チームを派遣し,遺族からの剖検了解の取得,院外委員を加えた院内事故調査委員会の開催,調査報告書の作成を支援するというもので,「福岡方式」と呼ばれている.事業は,調査分析支援チームの運用を担い,その支援規定等を作成する調査分析事業運営委員会と,それを審議・監督する医療安全対策委員会でスタートしたが,モデル事業自体の周知が不十分であったため,現在はその周知に努めている.
 モデル事業の開始後,複数の病院から照会があったが,剖検の承諾取得が難しく同事業への登録が阻まれたという声もあったことから,当面は非剖検事例も院内事故調査委員会の開催支援の対象とすることとし,六件の依頼を受け付けた.二例で剖検の承諾を取得し,モデル事業に登録,四例は院外委員を加えた院内事故調査委員会と調査報告書の作成を行った.報告書は,医師会担当理事と事務職員が当該病院に赴き,当該医師も含めた病院幹部と作成している.
 院内事故調査委員会後,当該病院の医師や看護師から,医師会の試みに驚きと感謝の言葉があり,非医師会員の勤務医との間で連帯感が確実に芽生えつつある.

3.中小病院での勤務医支援

 超高齢社会に適切に対応する地域医療構築への道筋は,単なる量的問題にとどまらない.
 地域が求める医療体制構築のためには,「シームレスな地域医療連携のビジョンと仕組みの構築」「二次医療圏や生活圏での医療資源と医療の提供」「地域の実情に応じた在宅医療を含めた包括的医療・介護・福祉を担う多職種連携の構築」とともに,それを支える「診療情報の共有と医療業務の効率化をもたらすICT(Information and Communication Technology)を利用した地域医療ネットワークシステムの構築と維持」が必要であり,医師会が中核となって,地域医療の質の担保に向き合い,住民,行政と理念を共有し,中長期的ビジョンと方策を練り上げていかなければならない.
 半世紀以上かけて先人がつくり上げてきた「三層構造」といわれる日医の組織の合理的強化と改革を行い,シンクタンク機能とボトムアップ機能の強化に真摯(しんし)かつ大胆に取り組むべき時期にきていると思われる.
 日医は国民,住民に信頼される医療政策と医療体制のビジョンを提示し,都道府県医師会や郡市区等医師会が中核となり,二次医療圏と生活圏における地域の実態に即した医療連携の構築へ向けて動き出すためにも,病診連携はもとより,有床診療所を守り,地域中小規模病院の連携と協働に取り組むことが,プロフェッショナル・オートノミーを担う学術専門団体として日医が永続・発展する上でも必要なことだと考える.

4.女性医師支援の具体的方策と勤務医の組織率向上

 若い女性医師が病院勤務から離職している主な理由は,妊娠・出産,育児等のライフイベントであることは種々の調査からも明らかである.この裏には,長時間勤務・過重労働という重い負担のために,両立が困難,あるいは周囲の理解が得られないことから離職せざるを得ない状況がある.
 女性医師の就業継続・復職支援は,全ての勤務医の就労環境の改善と勤務医の増加につながるものであり,これを全ての医師で共有する価値観とすることが肝要である.女性医師は自覚と強い意志を持って離職せず仕事を継続し,男性医師は多様性を理解し,社会で子どもを育てるという観点を持つことが,結果的に勤務医の確保にもつながる.
 日医の女性医師支援のための取り組みを,勤務医の組織率向上に発展させるためにも,(一)講習会や講演会を通じた病院幹部や周囲の医師の意識改革,(二)ライフイベント中の勤務医への就業継続支援,(三)医師会と大学病院の連携による復職支援と再研修支援,(四)日医のファミリーサポート機能強化等による出産・育児,家事支援,(五)講習会等の開催,研修医会費の無料化等による,医学生・研修医・若手勤務医への働き掛け,(六)日医のみに入会出来,日医で異動手続きを行う等の三層構造の改革,(七)代議員に占める勤務医比率をその会員比率に近づけるとともに,勤務医の理事職を増やす一方で,代議員及び理事に女性医師枠を設置する等の組織改革─を提案したい.

5.日医入会までの三層構造と勤務医の問題

 日医に入会するためには,郡市区等医師会と都道府県医師会に入会する必要があり,その三層構造が大きな障壁となっていることは,以前から問題提起されてきた.
 厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師調査」によれば,最近は二年で八千人以上の医師数の増加があるにもかかわらず,日医会員数があまり増加していないことは,極めて深刻である.学会等と同じく,一度入会したら,どの地区に異動しようとも医師会員資格を維持出来る制度を早急につくらなければ,異動の多い勤務医や女性医師の入会は進まず,会員増加は望むべくもない.
 日医入会の三層構造を改善するための方策として,以下のような案を提案したい.
 (1)都道府県医師会と日医の二層にし,郡市区等医師会を都道府県医師会の下部組織とする.郡市区等医師会に入会すれば自動的に都道府県医師会の会員とし,会費は受けるメリットにより区分し大幅な低減を図る.
 (2)都道府県内では異動によっても,会員資格を失わない.
 (3)勤務医を対象に,生涯教育と会誌受け取り程度の資格に限定した全国会員制度を作る.
 (4)最終的に,日医会員のみに統一し,全医師の加入する組織とする.

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