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第1267号(平成26年6月20日) |
男女共同参画社会へ向けての厚生労働科学研究概要
総合母子保健センター愛育病院副院長・産婦人科部長 安達知子
「二〇二〇・三〇」,これは,二〇二〇年までに社会のあらゆる分野において,指導的立場に女性が占める割合を三〇%にするようにという政府の目標である.産婦人科では昨今,短期間に急激に若手女性医師が増加しているが,私の入局した頃は男性医師が九〇%以上を占め,女性医師の入局はお断りという大学も多数あった.しかし,産婦人科は,他の診療科とは異なり医師数は減少しているため,若手医師の中で急増する女性医師を,現場を離れる期間を出来る限り短くして常勤で勤務させる施策は,安全で質の高い産婦人科医療を提供することに対し必須である.
そこで,「男女共に働きやすい職場を整備する」「女性医師の活躍を継続させ,女性医師の役職者を増やす」などの取り組みを推進するため,二〇〇八年及び二〇一〇年に,厚生労働科学研究補助金,特別研究事業「病院勤務医等の勤務改善に関する研究」の分担研究と地域医療基盤開発推進研究事業「女性医師離職防止のための勤務支援好事例の収集と検討」の研究を行った.
本研究では,女性医師が働きやすい病院と評価される十施設を抽出し,病院長,事務部長,そこで働く妊娠中または育児中の若手産婦人科女性医師に聞き取り調査を行い,病院独自の施策などを含めて『妊娠・出産・育児中の女性医師が働きやすい職場づくり』の冊子を作成した.
また,これとは別に,就学児を持つ中堅の女性医師,及び学会役員や研修指導施設の管理職を担う少数の女性医師にも直接聞き取り調査を行い,今までに一番大変だったことやそれを乗り切ったコツ,後輩達に対するワーク・ライフ・バランスのアドバイスを中心に,女性医師へ向けてのメッセージとして,『女性医師活躍推進のための女性医師のキャリア・デザイン』の冊子を作成した.
「子育て中の女性医師が働きやすい病院」を実現するには,まずは病院長の考え方が大切である.いろいろな施策を整えることは,収入の増加にすぐに結び付くものではないが,将来への投資であり,女性医師が働きやすい職場は周りの全ての人が働きやすい職場となり,良い人材が集まり,患者からの評価も高くなるという強い信念とリーダーシップが必要である.また,夫の意識,理解や協力も重要であった.女性医師への支援の根本は,多様なニーズに対応出来る選択肢の多い支援策を提供し,一度女性医師が決めた勤務形態であっても,状況に応じて柔軟に変化させて,選択出来るようにすることである.仕事へのモチベーションを高く保てるように,本人の経験に合った仕事が出来るようにし,周りの人に不公平感を抱かせないようにすることが,肝心である.
『働きやすい職場づくり』は,(一)勤務環境の見直し(対象は全ての勤務医),(二)女性医師への具体的な支援,(三)聞き取り調査から得られた好事例からの施策─の三つのステップから成り立っている.
一方,必要不可欠なものは,キャリア継続に対する女性医師の高いモチベーションである.女性は男性と比較して,種々のイベントのために将来が見通せない部分が多く,家庭のためにキャリアを諦めなくてはならないかという迷いや孤独感を持ちやすい.
そのため,『女性医師のキャリア・デザイン』では,ワークとライフの生涯計画(年表)を作成して,それぞれに数々の重要なテーマを盛り込み,どのように考え,乗り越えてキャリア継続していくかなどについてまとめた.
女性医師への七つの強いメッセージを表に示した.これらの詳細については,日本産婦人科医会HP(http://www.jaog.or.jp/all/chart/index_2.php)より検索出来るので参考にして頂きたい.
プロフェッショナルとして活躍しつづけるための7か条
- 周囲の支えで今のキャリアがある
- 社会で役立ちはじめてキャリアは意味を持つ
- キャリア形成は長期ビジョンで
- キャリアコースの選択肢は多く相談先も多く
- キャリア継続は社会の手もかりて
- キャリアデザインを意識して
- みなさん一人ひとりが新しいキャリアのロールモデルに
平成22年度厚労科研「女性医師活躍推進のための女性医師のキャリア・デザイン」より
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