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第1273号(平成26年9月20日) |
医師不足,無い物ねだり
いわき市立総合磐城共立病院院長 新谷史明
当院は福島県の地方中核市いわき市の市立病院,臨床研修指定病院であるが,ここ数年常勤医のいない診療科が四分の一を占める.
新医師臨床研修制度が始まった当初は十一名,十四名,十三名とマッチングは順調に推移,総医師数も百四十名を超えた.平成十九年に関連大学医局の内科医師引き上げがあり,研修医の応募が激減した.震災の年は研修医十三名が着任したが,翌年は原発事故の影響か,ゼロ.今年は医科八名,歯科一名の研修医が着任,医師数は百十四名まで回復,一息ついたところである.
市の消防統計によると,昨年度救急車の問い合わせ回数が十回を超える事例が一・九%に急増した.市内の病院勤務医がこの十年で百名ほど減少,震災を契機に開業医数よりも勤務医数が少なくなり,病院勤務医にかかる救急医療の負担が一挙に大きくなったためだ.
いわき市の人口十万対医師数は百六十二人と元来医師数が少ないのに,二次救急を担う病院勤務医が激減しているのである.
医師数の分布は西高東低が明らかである.東日本の医師養成数は西日本と比べて少なく,東北の地方都市の医師不足の原因は新医師臨床研修制度だけではあるまい.
それだけに,医師不足に対する即効性のある手立てはない.大学に医師派遣を要請しても,所詮(しょせん),無い物ねだり,自前で研修医を集め,育てるしか手はない.
東北人の気性故か自己PRが不足していたことを反省し,病院見学の学生には時間の許す限り,院長が直接顔を合わせて話をするよう心掛けた.また,Facebookに当院のページを開設,当院における臨床研修の魅力,地域医療と地域の魅力を医学部学生,若手医師に地道にアピールすることにした.アクセス数は順調に伸びているが,その効果が現れるのはいつの日か,“無い物ねだり”より“自己アピール”と言い聞かせている毎日である.
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