日医ニュース
日医ニュース目次 第1275号(平成26年10月20日)

勤務医のページ

医師会や勤務医部会と連携した女性医師支援
大阪市立大学大学院医学研究科病理病態学教授/大阪府医師会勤務医部会参与 上田 真喜子

 女性医師数が年々増加してきている.そのため,女性医師が出産・子育てをしながらでも,仕事を継続し,キャリアアップができるような勤務システムを確立することはきわめて重要であり,このことは,男性医師にとっての勤務環境改善にも直結する喫緊の課題である.

三点セットの整備が重要

 それでは,男性医師,女性医師を問わず,子育て世代の全ての医師の勤務環境を改善するためには,まず何を優先的に行っていくべきであろうか? このことについては,「意識改革に取り組む」「指導的地位の女性医師の割合を増やす」など,種々の意見があると思われる.
 しかし,子育てをしながら仕事を継続してきた私自身の経験によれば,実効性のある女性医師支援・育成策として最も重要で,かつ優先すべきことは,(1)院内保育所(あるいは近隣の保育所)(2)病児保育(3)柔軟な勤務システム─という,いわゆる三点セットを整備することである.
 この三点セットが,まず全国の大学医学部・附属病院で整備されなければならないことは,言うまでもない.大学は人々の考え方や社会制度のあり方に大きな影響を与え得る社会的存在であり,大学医学部・附属病院は,女性医師育成・支援をめぐる課題に率先して取り組み,解決策を提言・実施していく社会的責任を負っているからである.
 しかし,全国全ての大学病院において,この三点セットが完備されたとしても,それのみでは不十分である.なぜなら,地域の中核病院においてもこの三点セットが整備されない限り,子育て世代の全ての医師の就労環境を改善するという問題解決にはつながらないからである.

地域連携の中心は医師会

 各地域において,女性医師の育成・支援を行う場合,大学病院や地域中核病院との連携・協力の要として重要な存在は「医師会」である.
 各地域の医師会や勤務医部会が中心となって,地域病院群の病院長を始めとする管理職の先生方と女性医師達との相互の交流を図り,問題点について討議し,その解決策を共に検討していくことは,きわめて有効な方策である.

大阪府医師会の女性医師支援プロジェクトの成果

 大阪府医師会は,平成二十二年から独自の「女性医師支援プロジェクト─Gender Equality─」を,勤務医部会,男女共同参画委員会,五大学医師会,郡市区等医師会の密接な連携の下に推進し,成果を上げてきている.
 このプロジェクトでは,「スローガンではなく,実効性のある女性医師支援策を行うためには,地域の医療環境や特性に対応したきめ細かな検討が必須」との観点から,大阪府内の十一地域ブロックごとに女性医師支援ワーキンググループ(WG)を編成し,各WGの会議やシンポジウムを通じて,それぞれの地域ブロックでの問題点を探り,解決策や支援策について検討を続けてきた.
 その結果,平成二十五年一月の調査では,大阪府の基幹型臨床研修病院七十施設における院内保育所設置は八六%,病児保育室設置は四〇%,柔軟な勤務システムの導入は八一%と整備が著しく向上した.この結果は,大阪府内中核病院での女性医師支援策の着実な進展を裏付けるものである.

代替医師確保システムの検討

 大阪府医師会では,このように三点セットが充実してきている現在,産休・育休による勤務医数の減少が,残りの勤務医に過大な負担を強いたりすることがないようにするために,次のアクションプランとして,「産休・育休中の代替医師を確保するための運用システムの検討」を始めている.五大学や医会,勤務医部会と連携して,まずは産婦人科と循環器内科の領域でそれぞれWGを設置して,運用システムの具体的検討を進めている.
 子育て世代の医師が何の不安もなく働くことができる勤務システムを確立することは,女性医師だけでなく男性医師にとっての支援でもあり,日本の医療の豊かな未来に貢献する.各地域での医師会や勤務医部会と連携した女性医師支援の更なる進展が望まれる.

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