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第1285号(平成27年3月20日) |
教育力で地域医療の再生を
長崎大学病院へき地病院再生支援・教育機構 中桶了太
平成十七年,長崎大学で「地域で役立つ医療人を地域で育成するプロジェクト」がスタートした.
へき地の医療機関に教育拠点を開設し,そこに大学の教官が常駐して地域医療の最前線で教育を行うのである.私はその教官として平戸市民病院に開設された拠点に赴任し,今年十年目となる.
当時,新医師臨床研修制度の影響で大学へのスタッフの引き揚げが相次ぎ,地域医療の崩壊が深刻化した.このような地域へ若手を呼び,教育を行うことは不可能であると感じていた.
そんな折,視察で訪れたカナダのへき地の診療所で出会ったのは,へき地でありながら整備された教育体制とそこで学ぶ研修医であった.
地域での研修に対する大きなヒントであった.新研修制度で始まった地域保健・医療の分野は,予防から介護,福祉までを包括的に担当するわれわれにとって得意分野である.健診や在宅医療,他職種との協働をリソースとし,医学教育理論を用いて研修病院では学べない研修プログラムを構築した.
これが神戸にある神鋼病院の鈴木雄二郎先生の目に留まり,地域医療研修を担当することとなった.
初年度は年間二名だったが,今では十六の研修病院から年間三十名以上,十年で延べ百名を超える研修医が地域研修を行った.
平成二十五年度には長崎県,平戸市医師会,北松浦医師会の支援により,地域内の五つの医療機関が連携して地域研修を受け入れる「ながさき県北地域医療教育コンソーシアム」が発足した.
長崎県北部の医師不足の地域に,多くの研修医が地域医療研修に来るようになった.
このように,十年間で微力ではあるが,地域医療再生に貢献できたと感じている.将来,この地域で学んだ医師が,日本全国の離島へき地で活躍する日が来ることを楽しみにしている.
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