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第1297号(平成27年9月20日) |
日医・全国医学部長病院長会議合同記者会見
医師偏在解消策検討合同委員会「医師の地域・診療科偏在解消の緊急提言」の骨子を公表
医師の地域偏在、診療科間の偏在の解消が喫緊の課題となる中で、日医では、全国医学部長病院長会議と共に、「医師偏在解消策検討合同委員会」を設置し、本年3月19日の第1回会合開催以来、7回にわたって議論を重ね、今般、「医師の地域・診療科偏在解消の緊急提言─求められているのは医学部新設ではない─」の骨子を取りまとめ、横倉義武会長が8月19日、荒川哲男全国医学部長病院長会議会長らと共に合同記者会見を行った。
横倉会長は、本骨子を基に、今後執行部内でも更に検討を続け、国にも提言していく考えを示した。
更に同会長は、この件に関連して、千葉県成田市への医学部新設について議論している政府の東京圏国家戦略特別区域会議・成田市分科会が7月31日に、内閣府・文部科学省・厚生労働省が示した「国家戦略特区における医学部新設に関する方針」案を了承したことに触れ、「これまで日医では、若年層を始めとした人口が減少する中で、養成費用も含め、医師養成数の議論が先行して必要であると主張してきた。国家戦略特区における医学部新設については、日医や日本医学会のみならず、全国医学部長病院長会議や千葉県医師会も反対しており、地域医療を支える立場から慎重にあるべきであったにもかかわらず、成田市の医学部新設について3府省の方針が示されたことは大変遺憾である」と述べた。
一方、6月に閣議決定された「骨太の方針2015」において、「人口構造の変化や地域の実情に応じた医療提供体制の構築に資するよう、地域医療構想との整合性の確保や地域間偏在等の是正などの観点を踏まえた医師・看護職員等の需給について、検討する」とされていることについては、国に対し、地域医療を担う日医を始め、日本医学会や全国医学部長病院長会議の意見を聴きつつ、早急に議論をして欲しいと要望した。
続いて、釜萢敏常任理事が、同骨子の趣旨として、「現状に対する強い危機感の下、相当の覚悟をもって本提言を取りまとめた」とし、(1)医師キャリア支援センター、(2)出身大学がある地域での臨床研修、(3)病院・診療所の管理者要件への医師不足地域での勤務経験の導入、(4)地域ごと診療科(基本領域)ごとの医療需給の把握、(5)医学部入学定員の削減と新たな医学部設置認可の差し止め─という5つの大きな柱の内容について詳細に説明。本骨子を基に、近々「提言」をまとめる予定であるとした他、現在見直しが進められている医師臨床研修制度の行方によっても、その内容が変わる可能性があるとした。
荒川全国医学部長病院長会議会長は、2004年に開始された新医師臨床研修制度のマッチング制度が大学医局からの医師派遣機能に影響を及ぼしたこと、医師数の増加にもかかわらず、県庁所在地とその他の地域での医師の偏在は広がっている現状等に言及し、医学部新設では、解決につながらないことは明確になっていると指摘。「提言に沿って日医と共に努力していきたい」と強調した。
なお、当日は、合同委員会のメンバーである、小川彰・森山寛両全国医学部長病院長会議顧問、中川俊男副会長が同席し、記者からの質問等にも答えた。
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