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第1297号(平成27年9月20日) |
都道府県医師会医療事故調査制度担当理事連絡協議会
医療事故調査制度の円滑な実施に向けた具体的な支援について
都道府県医師会医療事故調査制度担当理事連絡協議会が8月21日、日医会館小講堂で開催された。
今村定臣常任理事の司会で開会。冒頭、あいさつした横倉義武会長は、医療事故調査制度発足が目前に迫る中、日医としても、全国の医師会員が、本制度の円滑な実施に向けた取り組みを進められるよう、施策の推進に努めているとした上で、「ご出席の先生方には、各地域における本制度の要として、医師会以外の支援団体や各施設などとの連絡・調整、並びに患者遺族と医療提供者間の橋渡し役など、大変難しく厳しい役割を担って頂くことになるが、本制度を患者・国民に信頼してもらえる制度へと育んでいけるよう、更なる協力をお願いしたい」と述べた。
続いて、大坪寛子厚生労働省医政局総務課医療安全推進室長が、「医療事故調査制度の施行を控えた状況について〜支援センターの指定と支援団体の大臣告示について等〜」と題し、支援団体として、「日医及び都道府県医師会」等(8月6日厚労省告示)が、また、第三者機関である「医療事故調査・支援センター」には、日本医療安全調査機構(8月17日厚労省告示)が、それぞれ指定されたことを報告。
本制度の基軸は医療機関の院内事故調査であり、中立性及び専門性、透明性、公正性を持った事故調査を迅速かつ適切に行うためにも、院内事故調査及び医療事故調査・支援センターの調査支援を行う支援団体の役割が最も重要になるとした。
その上で、「支援団体には既存の枠組みを活用し、各団体間で連携して支援窓口や担当者を地域ごとに一元化して欲しい」と要望するとともに、地域ごとの窓口を10月までに厚労省のホームページに掲載したいとの考えを示した。
中間答申を参照し、迅速かつ的確な対応を
左から今村常任理事、松原副会長、横倉会長、
平松委員長、上野副委員長 |
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引き続き、平松恵一医療安全対策委員会委員長が、当日、横倉会長に提出した(写真右)、日医医療安全対策委員会の第2次中間答申「医療事故調査制度における医師会の役割についてII〜院内事故調査の手順と医師会による支援の実際〜」の内容を概説。
特に、院内事故調査支援のあり方については、上野道雄同委員会副委員長から、福岡県医師会が実施している「福岡県医師会調査分析事業」における過去の具体的な事例を基に説明が行われた。
上野副委員長は、分析事業では、医師会が初期対応を担い、院内事故調査委員会開催までの日時の短縮を図るとともに、全ての事例について報告書を作成することで、民事訴訟、金銭支払件数が減少する等、一定の成果が見られたことを報告。
事故が発生した際の対処については、(1)初期対応と院内事故調査委員会を遅滞なく開催すること、(2)院外委員が委員長を担う院内事故調査委員会の設置、(3)当該病院と支援団体が協力し、修正協議を繰り返し報告書を作成、(4)当該病院は報告書を分かりやすく、かみ砕いて遺族に説明─することが重要であるとした。
その上で、支援団体である都道府県医師会には、(1)医療事故判断、(2)情報収集、(3)分析、(4)院内事故調査報告書の作成─等に関する手順や委員の選出等について、組織的に迅速かつ的確な対応が求められるとして、担当者によって対応が異なることのないよう、中間答申を参照し、これらについてあらかじめ決めておく必要があると指摘。
特に、透明性・中立性を担保するためにも、院内事故調査委員会は院外の委員が委員長を担うのが望ましいとするとともに、初期対応の際の些細な齟齬(そご)が、遺族の不信を招きかねないことから、関係者の心情に配慮した事実の収集を行うこと等、事故対応においては初期対応が最も大切になるとした。
また、報告書の作成に向けた論点整理の際には、当該病院と支援団体が忌憚(きたん)のない審議を重ね、関与する事象(所見、検査値、疑問)や、医師と思考過程が異なる看護師を始めコメディカルの意見や疑問など幅広く集め、診療録・看護日誌の閲覧を繰り返し行うことで新たな結論を導くこともあることから、「真相を埋もれさせないためにも、結論に誤りはないかということを常に疑問を抱くことが重要になる」とした。
100床以上の医療機関には別途保険を用意─今村常任理事
今村常任理事は、「医療事故調査費用保険」について、(1)医療事故が起こった際、会員の先生方の経済的負担の軽減や遺族に対して十分な院内調査を実施できる環境を整えることを目的としていること(2)医療事故調査制度の下、院内事故調査の実施にかかった費用を本保険で補償する制度であり、個別の手続きや新たな会費・保険料の支払いは発生しないこと(3)全ての診療所と99床以下の病院の開設者・管理者(開設形態の個人、法人は問わない)である日医A(1)会員を対象とし、日医が保険契約者となり、医療機関が外部に支払った調査等に関する費用全般を支払うもの(年間支払限度額500万円)であること─等を説明。
100床以上の医療機関の開設者・管理者の先生方が本保険の対象に含まれていないことについては、この度、日医として、100床以上の医療機関の開設者、管理者の先生方ができるだけ低廉(ていれん)な保険料で加入できる「医療事故調査費用保険」を別途用意したことを報告。病床種別、病床数に応じた保険料設定の他、要望に応じて1000万円の契約も可能であること等を紹介するとともに、加入手続きについては、各医療機関が保険契約者となり、都道府県医師会を通じて行って欲しいとした。
その他、幹事保険会社からは、保険金請求に関する事務手続きや請求書式等について、補足説明が行われた。
質疑応答では、事前に寄せられた質問・意見・要望や関連質問に厚労省の担当者や日医から回答を行った。特に、費用保険に対しては多く質問が出され、関心の高さがうかがわれた。出席者は101名。また、テレビ会議システムにより37道府県医師会に中継を行った。
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