日医ニュース
日医ニュース目次 第1297号(平成27年9月20日)

日医定例記者会見

8月26日
平成28年度の「医療に関する税制改正要望」まとまる

日医定例記者会見/8月26日/平成28年度の「医療に関する税制改正要望」まとまる(写真) 今村定臣常任理事は、日医の「平成28年度医療に関する税制改正要望」の内容について説明した。
 本要望は、会内の医業税制検討委員会で取りまとめられ、8月18日開催の第5回理事会において決定したもので、(1)福島原発事故対策、(2)医業経営、(3)医療法改正に伴う経過措置、(4)勤務環境、(5)患者健康予防、(6)社会医療法人、(7)医療施設・設備、(8)その他─についての21項目からなり、そのうちの16項目を重点項目としている。
 同常任理事は、(2)のうち、「消費税対策(1)社会保険診療等に対する消費税問題の抜本的解決」について、消費税率10%への引き上げが、当初予定されていた本年10月から平成29年4月に延期されたことにより、10%引き上げ時までに環境整備を行うことが時間的には可能であると考え、文言修正を行ったと説明。
 また、「消費税対策(2)設備投資について、特別償却または税額控除を認める措置の創設」については、消費税率10%引き上げまでの間、医療機関の消費税負担、とりわけ設備投資による負担を軽減するよう、昨年の追加要望に続き、今年度も重点項目として取り上げたとするとともに、厚生労働省の要望において、「医療機関の設備投資に関する特例措置の創設」が新たに加わったことを高く評価した。
 更に、「社会保険診療報酬に対する事業税非課税存続」「医療法人の事業税について特別法人としての軽減税率課税存続」についても、「厚労省が引き続き要望として取り上げており、これを評価したい」と述べた。
 なお、(3)のうち、「持分あり医療法人の相続及び贈与に係る税制」については、「厚労省は省の要望としては取り上げなかったが、日医から要望主旨を改めて説明し、厚労省の要望に加えて頂くよう、引き続き働き掛けていく」とした。
 (4)に関する要望としては、少子化対策の要素を前面に出したとし、厚労省の要望でも「子育て支援に要する費用に関する税制措置の創設」として取り上げられているとした他、重点項目として「市町村を含む地方自治体が実施する医学生修学金等の返還免除益が、給与所得として課税されないよう立法措置を含め必要な措置を講ずること」に関しても、厚労省の要望に新たな項目として追加されたと説明した。
 (5)については、医療費控除のうち、がん検診・予防接種を重点としたと述べるとともに、厚労省は「個人の健康増進・疾病予防に係る税制措置の創設」として要望したと説明。
 更に、同常任理事は、(6)に関して、「社会医療法人認定取消時の税制措置」については、厚労省の要望としても一部が取り上げられたことから、将来的には日医の要望につながるものとの認識を示した他、(8)のうち、「いわゆる四段階制存続」については、地域医療の確保のために必要な制度として、引き続き存続を強く求めていくとした。

平成28年度医療に関する税制要望(重点項目)

○医業経営

  • 消費税対策(1)
    社会保険診療等に対する消費税について、消費税率10%引き上げ時に環境を整備し、速やかに、現行制度から軽減税率等による課税取引に転換すること等により、医療機関等の消費税負担をめぐる問題の抜本的解決を図ること。
  • 消費税対策(2)
    青色申告書を提出する法人または個人が、医療の質の向上または生産性の向上に資する一定の固定資産を取得し医療事業の用に供した場合には、取得価額の50%の特別償却または4%の税額控除を認める措置を創設すること。
  • 消費税対策(3)
    予防接種や法令に基づく健診などの自由診療について、患者の負担を増やさないよう軽減措置を検討すること。
  • 消費税対策(4)
    簡易課税制度の見直しは慎重に行うこと。
  • 社会保険診療報酬に対する事業税非課税存続。
  • 医療法人の事業税について特別法人としての軽減税率課税存続。

○医療法改正に伴う経過措置

  • 医業承継時の相続税・贈与税制度の改善。
    ・持分の定めのある医療法人に係る相続税及び贈与税の納税猶予制度の創設。
    ・認定医療法人について相続税法第66条第4項の適用を受けないよう必要な措置を講ずること。
    ・出資の評価方法の改善。

○勤務環境

  • 少子化対策として、ベビーシッター経費を特定支出に含めるなど特定支出控除の適用範囲を拡大するとともに、勤務必要経費の上限額を拡大すること。
  • 市町村を含む地方自治体が実施する医学生支援等地域医療確保のための医学生修学金等の返還免除益が、給与所得として課税されないよう立法措置を含め必要な措置を講ずること。

○患者健康予防

  • がん検診・予防接種の自己負担分について、医療費控除の対象とすること。
  • たばこ税の税率引き上げ。

○社会医療法人

  • 社会医療法人認定取消時の税制措置。

○医療施設・設備

  • 環境関連投資促進税制(環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却または特別税額控除制度)の適用期限を延長するとともに、適用対象を拡充すること。
  • 病院・診療所用の建物の耐用年数を短縮。

○その他

  • 社会保険診療報酬の所得計算の特例措置(いわゆる四段階制)存続。
  • 公益法人制度改革に関わる所要の税制措置。
    (1)医師会について
    ・医師会への寄附者に対する税制措置。
    ・医師会が行う開放型病院等の固定資産税等非課税措置の恒久化、その他の措置。

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