医師のみなさまへ

2024年5月1日

JMAT携行医薬品リストについて

日本医師会 救急災害医療対策委員会 JMATのあり方WG

JMAT携行医薬品リスト Ver.3.0

 

 JMAT(日本医師会災害医療チーム)が被災後1週間以内に被災地へ支援に行く場合を想定して、準備する薬剤の指針を提示する。JMAT携行医薬品リストVer3.0は、現場や学術的な見地から各関係学会や医会、都道府県医師会及びアドバイザーに意見を求め、改訂したものである。新薬の登場に伴い医療現場で使用される医薬品が変わることもあるため、以下のコンセプトに沿って、今後も関係学会等からの意見を参考に適宜更新されるものである。
 近年わが国で発生している災害の規模や状況は様々であり、準備する薬剤については、先遣JAMTおよび統括JMATから提供される情報を参考にしながら、各JAMTで可能な範囲で臨機応変に対応することになる。また、東日本大震災をはじめとして発災後の避難所で多く見られた薬剤処方状況は、被災者は普段のように『いつものお薬が欲しい』と依頼することが多い。避難が長期化すると、風邪薬、口内炎の薬の依頼だけでなく、不眠になった被災者から寝られるためにお薬を欲しいという依頼もみられる。避難された住民の年齢構成等も避難所ごとに異なる。このように多岐にわたる被災者への支援を可能とし、軽量コンパクトに、そして現場で迅速に処方できることが求められる。本リストは各JMATでどの薬剤を携行するのかを決めるにあたり、参考資料として活用されるものである。

 

コンセプト:携帯する薬剤選定に問われる必須4項目
①大多数の医療従事者が知っていて扱いやすいこと
②値段が安価であること
③流通上のフローとストックで確保しやすいこと
④JMAT携行資器材や資料で活動ができること

 

◆JMAT携行医薬品リスト(全体版)⇒

 

このリストは大まかな薬剤リストであるため、以下の点に留意する。

  • 発災後初期段階でのJMATが所持する大まかな指針である。
  • 全てを携行するよう求めているものではなく、携行する薬剤選定の際に考慮するものである。
  • 専門家チームではなく、多くの開業医でも使いやすい内容である。
  • 循環器系、糖尿病系および精神科系の薬剤に関しては、各地域および各個人で使いやすい、また確保しやすい薬剤があるため、このリストにこだわらず調整する必要がある。
  • 季節・災害の種類・感染症情報などにより、薬剤の種類及び数量は変更する。
  • 被災地の患者情報、薬剤の供給・処方等の状況を基に、後続JMATが携行する薬剤を調整する必要がある。
  • 薬剤は半分にしたりして量を調節できるものはそれで代用し、薬価及び重量を下げた。
  • メルカゾールなど様々な薬剤追加のご意見があるが、今回は緊急性があるものや一般的に避難所で処方数が多いと思われる薬剤をコンセプトに基づいて選択している。
  • 各JMATで必要と判断した薬剤を携行することでもよい。
  • インスリンなどの冷蔵保管の薬剤を追加で持参する場合は、現地に冷蔵設備があるかどうかを確認する。
  • 処方にあたって、簡易検査以外の詳細な検査が必要と判断した場合や重症化のリスクが高い被災者の場合は、被災者の服用歴等の薬剤の確認のみ行い、適宜病院へ相談する。
  • 様々なご意見を元に、リストの改訂作業は2年以内で定期的に行う必要がある。

 

 予想される首都直下型地震そして南海トラフ巨大地震では、3ー7日、状況によっては1ヶ月以上の薬剤の不足及び供給低下が予想され、それまでの間は携帯する薬剤で初期の避難所の巡回診療や被災者への医療活動を行うことが求められる。

 JMATの薬剤リストの強みは、単なる薬剤を意味するだけで無く、日本薬剤師会と協力して安定した薬剤供給体制のもと、システムとして対応することを目指している。さらに災害時の薬剤供給はその他生活必要品(水、食糧、その他)の供給と関連するため、医療にとどまらず総合的な被災者支援を視野に入れた活動が可能となる。

 

JMAT医薬品携行医薬品リスト一覧

成人基本リスト 想定規模:およそ1000人の地域の避難所(5か所程度)へ支援に行き、300人程度を診察、1人あたり最大3日分処方する状況の1週間を想定
季節:春や秋を想定(梅雨および冬期の対応には配慮が必要)
時間:緊急時である発災から2週間前後は、余裕がなければ全員に対して通常時のような手厚い処方体制は必ずしも必要ない(例:いつもの高血圧薬が欲しいなど)
精神科リスト これは日本精神科病院協会の一例を参考にしたものであって、薬剤の種類および数量は各自で変更調整する必要がある。
精神科専門ではないJMATが処方する場合を想定している。
小児科セット 成人基本セットリストと同様の状況を想定。小児科専門ではないJMATが処方する場合を想定している。
産婦人科リスト 妊婦緊急搬送キット
緊急避妊薬
緊急処置用リスト 現場で迅速に処置が必要な患者を病院へ搬入するまでに使用することを想定

 

※搬送方法について:ハードやソフトのバッグやケースに入れ、かつジップロック等で小分けし種類別・薬剤別にすると便利である。
JMAT携行資器材について

 

ハードケース ラベリング 小分け

 

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◆お問い合わせ先
日本医師会 地域医療課 TEL:03-3946-2121(代)