勤務医のページ
平成30年度(第39回)全国医師会勤務医部会連絡協議会(日医主催、長崎県医師会担当)が昨年11月3日(土・祝)、29年ぶりに長崎市内で開催された(別記事参照)。
その翌日の11月4日(日)午前9時より「勤務医交流会」を開催した。
これは、平成29年、北海道医師会が、若手を中心とした勤務医がさまざまな問題を話し合うために開催した勤務医交流会が盛会裏に終了したことを受けて、長崎県医師会主催で行ったものである。
若手医師を中心にした勤務医活動実績のなかった我々はまさに手探り状態から準備を開始し、何とか無事終了した交流会について、その概略を報告する。
メインテーマは「Sustainable Medical Development Goals in Nagasaki ~長崎における持続可能な医療発展のためのキャリアプラン」とし、"ワークライフバランスを通じて持続的な勤務が可能な環境づくりを探る""長崎におけるキャリアパス、キャリアデザインを共に考える"を目的とした。
統括ファシリテーターとして、日本医師会Junior Doctors Network役員(地域担当)で長崎大学病院感染制御教育センターの河野圭助教が進行・運営を行った。
6名1グループ(日医の勤務医委員会のメンバーと長崎県医師会勤務医部会のメンバーに長崎県の若手医師、研修医、医学部生を組み合わせて編成)を6組つくり、三つのテーマについて約15分間、ファシリテーター(長崎県医師会勤務医部会メンバーや長崎大学、長崎市内の病院の教授、院長クラスから新進気鋭の若手医師まで多彩な顔ぶれ)のいる各テーブルを順次回って討議していく、いわゆるワールドカフェ方式を採った。
本交流会には全国から98名の参加を得たが、このような形式にしたために、多くの先生方にはオブザーバーとして参加して頂いた。
テーマ1「臨床研修と専門医制度と、その後のキャリア」
新専門医制度については、「内容が分かりにくい」「制度がころころ変わる」などの厳しい意見が相次いだ。
臨床研修制度についても2020年度からの必修診療科の変更などには不安・不満も示された。また、研修期間は1年で良いという意見と、やはり2年ないと不十分であるとの論議があった。
その他、進路をいつ頃決めるのか、という点については個々でさまざまな回答であった。
長崎県には離島が多く、本県独自の医学就学生制度があり、選択の幅が広い方が良いというファシリテーターからの発言があった。
テーマ2「結婚・出産・子育て~働き方改革などと合わせて~」
多くの若手医師達は、結婚して子どもが欲しいという気持ちはあるが、離島の多い長崎で勤務先が別々になったらどうするのかといった不安や、それ以前にパートナーがいない、どうやって探すのかといった切実な発言もあった。また、「男性医師の働き方を変えていくこと、そして、お互い支え合い感謝の気持ちをもつことが大切ではないか」「いろいろな工夫をしながら、とにかく夫婦で働いている医師を増やしていくことが大事である」との意見もあった。
もう一つのグループからは出産、子育てには男性医師も積極的に関与することの重要性が指摘されるとともに、「タスクシェアリング、タスクシフティングを一層進めていくためには患者側にも一人の主治医が全て行うという感覚を改めてもらい、病院の経営陣もそのような観点で病院経営を考えるべきである」との発言もあった。
テーマ3「へき地医療と救急医療~地域医療構想などと合わせて~」
離島、へき地医療の問題点として、医師不足、キャリアの問題、生活の問題が挙げられた。
これらについては、へき地医療経験が管理者の要件になるような制度面の改善、医師不足には大学医局や基幹病院からのサポート、定年後のシニアドクターの活用、遠隔ICT(情報通信技術)の利用など、また生活面では、地域の受け入れ体制の充実が提案された。
逆に、幅広く多くの症例が経験でき、のびのびした生活ができるというメリットも指摘された。
他のファシリテーターからは救急医療を行う上で、専門外の疾患をいかに診察していくかという問題について、自分の経験を重ねての意見や放射線医による画像診断システムにも言及があった。
その後、オブザーバーの医師から、「どの科の医師であっても、ある程度の初期対応ができるような教育が必要である」「離島、へき地医療を逆にその後のキャリア形成に役立てるようにすべきである」などの貴重な意見が出された。
総括(今村副会長)
最後に今村副会長から総括が行われた。専門医制度、医学部の教育、女性医師支援などについて日医の考えや実際の取り組みについて説明があった。そして、このように各地域で若手医師を交えていろいろな問題を議論することの大切さを強調して頂いた。
終わりに
長崎県医師会主催の勤務医交流会は、2時間という制約の中で予定どおりに閉会した。
先述したように、どのように企画していけばよいのか全く分からない状態でのスタートだっただけに、無事終了して責任者の一人として本当に安堵したというのが本音である。
開催に当たり叱咤激励頂き、交流会の企画のヒントやアドバイスを頂いた皆様方、そして、交流会に参加して下さった全ての方々に感謝申し上げる。