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令和4年(2022年)6月20日(月) / 日医ニュース

HPVワクチン接種の推進に向けた協力を

HPVワクチン接種の推進に向けた協力を

HPVワクチン接種の推進に向けた協力を

 HPVワクチンの積極的な勧奨(接種対象者に個別に接種を勧める内容の文書を送る取り組み)が2022年4月から再開された。
 そこで今回は、感染症危機管理対策・予防接種を担当している釜萢敏常任理事にこれまでの経緯等について、説明してもらった。

 HPVワクチンは、2013年4月に公費で接種が受けられる定期接種に組み入れられました。
 しかし、その後に接種後に体のさまざまな部位に持続する疼痛等の症状が報告されたことを受けて、同年6月14日に開催された厚生労働省の専門家会議において、ワクチン接種の効果と比較した上で、定期接種を中止するほどリスクが高いとは評価されない一方で、接種後に生じた症状と接種との関連については、十分に情報提供できる状況にないことから、適切な情報が提供できるまでの間、定期接種の積極的な勧奨を一時差し控えるべきとされました。
 その後もHPVワクチンの接種については、厚労省の専門家会議において継続的に議論がなされてきましたが、ようやく昨年11月12日に開催された厚労省の専門家会議において、安全性について特段の懸念が認められないことが確認されたことに加えて、接種による有効性が副反応のリスクを明らかに上回ることが認められ、引き続きHPVワクチンの安全性を検証するとともに、ワクチンに関する情報提供を充実させていくことなどを進めていくことで、積極的な勧奨を差し控えている状態を終了させることが妥当であると判断されました。
 こうした厚労省の専門家会議の意見を踏まえ、11月26日には差し控えの状態を終了させることが決まり、基本的に本年4月から、積極的な勧奨が順次行われることになりました(定期接種は組み換え沈降2価あるいは4価ウイルス様粒子ワクチン)。
 積極的な勧奨が再開されるとともに、国では積極的な勧奨が再開されるまでの間に接種できなかった対象者への対応として、2022年4月~2025年3月の3年間、「キャッチアップ接種」を実施することになりました。
 対象者は、誕生日が1997年4月2日~2006年4月1日の女性で、過去にHPVワクチンを合計3回接種していない方となる他、2006、2007年度生まれの方に関しては、通常の接種対象の年齢(小学校6年から高校1年相当)を超えても、2025年3月末までは接種が可能としています。

多様な症状とワクチン接種の因果関係は認められていない

 心配されるHPVワクチン接種後に見られる主な副反応ですが、広い範囲に広がる痛みや、手足の動かしにくさ、不随意運動等を中心とする「多様な症状」が起きたことが副反応疑いとして報告されています。
 この症状は、何らかの身体症状はあるものの、画像検査や血液検査を受けた結果、その身体症状に合致する異常所見が見つからない状態である「機能性身体症状」であると考えられています。
 症状としては、(1)知覚に関する症状(頭や腰、関節等の痛み、感覚が鈍い、しびれる、光に対する過敏など)、(2)運動に関する症状(脱力、歩行困難、不随意運動など)、(3)自律神経等に関する症状(倦怠感、めまい、睡眠障害、月経異常など)、(4)認知機能に関する症状(記憶障害、学習意欲の低下、計算障害、集中力の低下など)など、さまざまなものがあります。
 しかし、HPVワクチンの接種歴のない方においても、同様の症状を有する方が一定数存在したことが明らかとなっています。
 また、このような「多様な症状」の報告を受け、さまざまな調査研究が行われていますが、「ワクチン接種との因果関係がある」という証明はされていません。

体調不良の訴えに寄り添った対応を

220620f2.jpg HPVワクチン接種後に見られるこのような体調不良の訴えは、今後、接種実施の関与の有無にかかわらず、さまざまな医療機関に寄せられることが考えられます。
 体調不良を訴えている方は、同時に大きな不安を抱えている場合が少なくありません。先生方におかれましては、相談を受けた場合には、内容をしっかりと受け止め、訴えに寄り添って頂きますようにお願いいたします。
 また、その際には、厚労省が『医療従事者の方向けのリーフレット』(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000901222.pdf)を作成していますので、ぜひ、ご活用頂くとともに、都道府県ごとにHPVワクチン接種後に生じた症状の診療を行う協力医療機関が設置されておりますので、ぜひ連携を図って頂きたいと思います。
 加えて、子宮頸がんの予防のためには、子宮頸がん検診を定期的に受診することも極めて大切でありますので、ぜひ、国民の皆さんへの呼び掛けにもご協力を頂ければと思います。

ワクチンで救える命を救いたい

 国内の子宮頸がんの罹患者は、年間1万1000人程度(2018年)が新たに報告されています。若い年齢層において子宮頸がんを発症する割合が比較的高く、年代別に見ると、20代から発症する割合が上昇し、40代でピークを迎え、その後徐々に下降していきます。
 また、国内において子宮頸がんで亡くなる方は、年間2900人程度(2019年)いらっしゃると報告されています。
 日本医師会では、「ワクチンで救える命を救いたい」との思いで、今後もHPVワクチンの接種を推進していきたいと考えています。
 会員の皆様にはぜひ、その趣旨をご理解の上、引き続きご協力頂きますよう、よろしくお願いいたします。

お知らせ 動画「教えて!日医君!HPVワクチン」が完成
220620f3.jpg 日本医師会では、子宮頸がん等の予防のため、HPVワクチンの接種と定期的な検診を呼び掛ける動画「教えて!日医君!HPVワクチン」を制作し、5月30日より、日本医師会公式YouTubeチャンネルで掲載しています。ぜひ、ご覧下さい。
 なお、希望者に本動画のデータ(MP4ファイル)を差し上げます。ご希望の方は、(1)所属機関、(2)氏名、(3)電話番号、(4)使用目的を明記の上、日本医師会広報課(kouhou@po.med.or.jp)まで、タイトルを「HPVワクチン動画希望」として、メールでお申し込み下さい。

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