閉じる

令和4年(2022年)11月20日(日) / 日医ニュース

循環器分野勤務医でのダイバーシティへの取り組み

勤務医のページ

循環器分野勤務医でのダイバーシティへの取り組み

循環器分野勤務医でのダイバーシティへの取り組み

1.一勤務医として循環器急性期医療に携わる

 医師になり約20年、この間、医学生の長女も成人を迎え、子育てをしながら循環器内科勤務医を続けてきた。そんな一循環器勤務医の立場から、循環器領域のダイバーシティの昔と今、そしてこれからを話したい。
 生理学に強く興味を持ち、また救急救命に関与したく、循環器内科を選んだ。急性冠症候群へのカテーテル治療や心不全への集中治療に興味を抱くも、学部時代に結婚・出産を経験し、乳幼児の育児をしながらの国家試験、そして初期臨床研修に進むことになった。
 当時は政府より第2次男女共同参画基本計画がまだ出されたばかりであり、現場の男女参画は進んでおらず、ましてや循環器急性期治療に女性、そして家庭持ちはNGといった雰囲気であった。
 初期研修先で引き続き循環器研修を始めたが、家庭との両立に悪戦苦闘の日々で、現場に女性医師はおらず、気軽に相談したり、メンターを求めたりすることは困難であった。
 そんな中、研究会を通じて循環器女医やインターベンション女医の会があることを知り、参加することになる。そこで得た横のつながりが、今日までの私の循環器内科医としての、また、冠動脈インターベンションへの携わりや学術活動の継続のモチベーションとなった。
 大学病院とは異なり、市中病院ではどこの施設でも、キャリアのことや家庭との両立など、皆日々奮闘しながら臨床や研究に従事していた。そして、そこにあったのは少しでも社会の役に立ち、循環器領域を充実させていきたいという熱い心意気であった。

2.学会としてのダイバーシティへの取り組み

 2010年には、日本循環器学会男女共同参画委員会が発足し、現状把握から始まった活動は、学術集会や地方会においてセミナーやセッションが開催されるまでになった。学術集会での託児所の設置や、産休・育休時の専門医更新の特別措置等の提案がなされ、実現した。
 この年には、2020年までに女性の人材を30%に引き上げることを主軸とした第3次男女共同参画基本計画が政府より出された。
 循環器学会においても、学術集会での女性座長の増員や女性循環器医の勤務環境改善のためのワーキンググループの発足等がなされ、組織としての取り組みも始まり、委員会の名称もダイバーシティ推進委員会に変更となった。
 心血管インターベンション領域では特に女性医師が少なく、体力面や心理面、女性特有のライフイベントのサポート体制等、まだまだ多くの障害が存在することから、心血管インターベンションの更なる向上に寄与することを目的として、Japan Women's Interventional Conference(J―WINC)が2008年に設立され、活動が続いている。男女問わず連携を図りながら、積極的に血管内の治療及び診断技術の向上と普及に貢献すべく、ワークショップや研究会、学会でのセッション等を行っている。
 また、2017年には、ダイバーシティ推進委員会の下部組織として女性循環器医コンソーシアム(JCS―JJC)が設立された。
 JCS―JJCは、女性循環器医師の相互の連携を計り、循環器領域における女性医師の臨床及び研究面でのキャリア確立・発展を助け、幅広く循環器領域における医療に貢献することを目的とした会である。
 この会が中心となり『初めての座長の手引き』が作成され、女性座長の増員に役立ち、ボトムアップを図れた。その他、学会座長の意識調査アンケートも実施し、その結果を論文発表している。

221120o2.jpg

3.横のつながりの構築がキャリア形成、働き方改善やよりよい医療への一助となる

 女性医師人口は年々増加の一途にあり、循環器領域においても例外ではない。しかし、まだお互いの現状を知る機会が少ない実情は残っており、今後は、全国各地の経験豊富な仲間と交流を深めることで、モチベーションの維持や向上、ジェンダーやジェネレーション・地域・領域の格差を埋め、多様な人材が活躍できるよう、また循環器領域において、女性医師がリーダーシップを発揮できるようにしていく必要がある。
 2024年には働き方改革が本格化していくが、人材を確保し体制を整えることは、良質な医療を提供し、医学の発展を推進する上で重要な課題となる。救急疾患が多い循環器領域では、依然として男性社会で多忙な分野であり、多くの女性医師は家庭との両立で精一杯な上、「自分はいいや」と一歩引いてしまうことも多い。ガラスの天井は、日本の女性医師にとって結構な強化ガラスではあるが、これまでの活動を通じて、少しずつ穴を開けてきたと思う。
 参加すること・発信することで自分の視野が広がり、また、新しい人とのつながりができ、自分にとってもプラスのことは多い。男女問わず、働きやすく活躍できる職場は、生産性や幸福度も上がると考えており、そのような環境になるよう、引き続き環境改善に尽くしていきたいと思う。

戻る

シェア

ページトップへ

閉じる