勤務医のひろば
新型コロナウイルス感染症の流行を経験し、医療機関の役割分担と連携がいかに重要であるかを思い知らされた。
この役割分担と連携がうまく機能した、高岡医療圏における新型コロナウイルス感染症診療(第5波、デルタ株まで)についてご紹介する。
高岡医療圏は、富山県西部地区に位置する高岡市(16・3万人)、射水市(9万人)、氷見市(4・2万人)の3市から成り、三つの公立病院(高岡市民、射水市民、金沢医科大学氷見市民)と三つの公的病院(厚生連、済生会、JCHO)がある。
県内で新型コロナウイルスの新規感染者が発生し始めた当初、医療圏のコロナ患者受け入れ病院長・郡市医師会長・厚生センター長・市の担当責任者が一堂に会し、各病院の機能・役割を明確にし、連携についての取り決めと確認を行った。
そして、厚生センターの指示の下、患者とのやりとり窓口を各病院のICDに一本化し、現場で解決できない事案に関しては、病院長間での解決を図った。また、定期的に協議会を開催し、問題点・今後の方策について話し合い、それらを全員が共有した。
具体的には、感染症指定病院(高岡市民)、3次救急医療機関(当院)、その他医療機関(他4病院)の受け入れ患者・病床数を明確にし、それに基づき患者を厚生センターが振り分け、各病院はその指示に基づき患者を受け入れていった。
軽症・中等症は、まずは感染症指定病院に入院させ、確保病床の8割を超えるとその他医療機関に振り分けていった。重症患者は、全て3次救急医療機関へ入院・転院させた。
また、その他医療機関の確保病床が満床になった場合は、中等症の患者は当院にも入院させた。重症から回復したら、退院基準前の場合は感染症指定病院へ、退院基準を満たし、リハビリだけとなった場合はその他医療機関の回復期病床に再転院させた。
これにより、当医療圏では、患者の受け入れ・転院が非常にスムーズに行われた。
つい先日、地域医療構想調整会議が、実に2年半ぶりに開催された。新型コロナウイルス感染症診療において培った経験を、これまで遅々として進まなかった地域医療構想に生かしていければと思っている。