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令和6年(2024年)12月20日(金) / 日医ニュース

適切な財源確保を求める決議を参加者全員の総意として採択

適切な財源確保を求める決議を参加者全員の総意として採択

適切な財源確保を求める決議を参加者全員の総意として採択

 国民医療を守るための総決起大会(主催:国民医療推進協議会、協力:東京都医師会)が11月22日、日本医師会館大講堂で開催された。
 大会には、約1,000名の参加者(そのうち国会議員約200名)が集い、参加者全員の総意として、国民の生命と健康を守るべく、医療・介護分野における賃上げ・物価高騰に対する取り組みを進め、国民に不可欠、かつ日進月歩している医療・介護を提供できるよう、適切な財源の確保を求める決議(別掲)が採択された。

 大会は、城守国斗日本医師会常任理事の司会により開会。冒頭、国民医療推進協議会長としてあいさつした松本吉郎日本医師会長は、「11月中に政府の新たな経済対策が取りまとめられ、その財源的裏付けとなる令和6年度補正予算案が12月に開催予定の臨時国会に提出され、年内に成立する見込みである」とした上で、これに先立ち、10月12日には石破茂内閣総理大臣と総理公邸で面会を行い、今年度の補正予算や来年度予算における医療分野の賃上げ・物価高騰への対応を要望したことを説明。また、加藤勝信財務大臣や福岡資麿厚生労働大臣などにも同様の要望を行ったことを紹介し、「医療・介護の報酬改定は毎年実施されるものではないため、医療・介護分野での賃上げと物価高騰への対応に向けて、今年度の補正予算や来年度予算の活用を求めていきたい」と述べた。
 続いて、あいさつに立った協力団体である東京都医師会の尾﨑治夫会長は、「2025年に団塊の世代が全て後期高齢者となる新たな超高齢社会を迎えるに当たり、多職種が協力する地域包括ケアシステムの構築を進めているが、物価等が高騰する中、医療・介護の賃上げは診療報酬の手当てだけでは追い付いていない」と指摘。他産業への人材流出も進む中、本日参集した各団体が元気でなければ少子超高齢社会を守ることはできないと訴えた。
 来賓あいさつでは、まず、鈴木俊一自民党総務会長が医療・介護分野の賃上げについて、「令和6年度診療報酬改定の措置だけでは足りないことは認識している」とした上で、「本日、補正予算が閣議決定される予定であるが、来年度予算も含め、国民医療を守るという観点から、医療体制が壊れないようしっかりと取り組んでいきたい」と述べた。
 田村憲久元厚労大臣は、今年度の補正予算で賃上げへの対応が盛り込まれたものの、補正予算で対応し続けることには限界があるため、予算そのものの組み方や構造を見直していく必要があると強調。「そのためにも、医療・介護団体が大きく声を上げていかなければならず、本大会をその契機にして欲しい」と呼び掛けた。
 秋野公造公明党参議院政策審議会長は、自身の医師としての経験を踏まえ、患者の社会復帰への貢献など、医療の重要性を国民に訴えていく必要があると指摘。薬価改定財源と技術料に関する同党の考え方に理解を求めるとともに、引き続き医療を守るために尽力する姿勢を示した。
 その後は、多くの衆参国会議員が駆け付け、参加者に対して「共に頑張っていこう」と呼び掛けた。
 引き続き、本大会の趣旨を説明した茂松茂人日本医師会副会長はまず、「少子高齢化が進むわが国において、地方では特に人口減少が激しい上、昨今の急激な人件費の増加、光熱費・食材料費の高騰なども相まって、現在の医科歯科医療機関、薬局、訪問看護、介護施設等の経営状況は非常に厳しくなっている」と述べ、国民に適切な医療・介護を提供できなくなることへの危機感を示した。
 また、令和6年度診療報酬改定で2・5%の賃上げを実現することとなったものの、令和6年春闘の平均賃上げ率は定期昇給込みで5・10%であり、医療・介護分野の賃上げは全く追い付いていないことを指摘し、このままでは他産業分野への人材流出を止められないとの見方を示した。
 更に、全就業者数の13・5%を占める医療・介護従事者に対する賃上げを実現することは、地方経済の活性化につながるとともに、わが国全体の賃上げにも寄与するとして、「今後も地域の医療・介護を守り、地方経済を活性化するためには、インフレに負けない賃上げを行い、医療・介護従事者を確保していくことが不可欠」と述べた。
 物価高騰については、令和6年度診療報酬改定で入院時の食費の基準額が約30年ぶりに引き上げられたものの、本年6月以降の食費に係る消費者物価指数が3カ月で既に2・3%上昇し不十分となっており、電気・ガス料金高騰の影響も大きいことを説明。「医科歯科医療機関、薬局、訪問看護、介護施設等の経営は限界にきている。わが国はようやく30年にもわたるデフレ経済から脱却し、賃上げの流れができつつあるという極めて重要な局面を迎えている中、こうした流れを医療・介護分野が止めてはいけない」と強調。引き続き、持続可能な社会保障制度の確立に向けて、国民が将来にわたり必要な医療・介護を安心して受けられるよう、本大会の出席者と協力しながら、国民と共に、適切な財源を確保すべく、政府に働き掛けていく姿勢を示した。
 続いて、参加団体を代表して、国民医療推進協議会の副会長でもある高橋英登日本歯科医師会長、岩月進日本薬剤師会長、高橋弘枝日本看護協会長(代理:任和子日看協副会長)が、それぞれ適切な財源確保に向けた決意を表明。その後、猪口雄二全日本病院協会長が、本大会の決議文を朗読し、同決議案は満場の拍手をもって採択された。
 最後に、釜萢敏日本医師会副会長の掛け声の下、参加者全員が起立して「頑張ろうコール」を行い、会は終了となった。

今回の決議等を基に関係各方面へ上申する意向を表明―松本会長

 総決起大会終了後には四師会がそろって記者会見に臨み、松本会長は、物価高騰に負けない賃上げを実施するための適切な財源確保の必要性を改めて強調するとともに、報道関係者に現場の窮状への理解と世論形成への協力を要請。今回の大会の決議をもって、政府与党を始め、関係各方面へ上申していく考えを示した。

決 議
 少子高齢化が進む我が国において、地方では特に人口減少が激しい上、昨今の急激な人件費の増加、光熱費・食材料費の高騰などもあいまって、現在の医科歯科医療機関、薬局、訪問看護、介護施設等の経営は非常に厳しい状況にある。このままでは人材確保がさらに難しくなり、国民に適切な医療・介護を提供できず、地域における医療・介護が崩壊しかねない。
 他の一般の分野では価格転嫁という手法も取られるが、公定価格により運営する医科歯科医療機関、薬局、訪問看護、介護施設等は、その上昇分を価格に転嫁することができない。賃上げと物価高騰、さらには日進月歩する技術革新への対応には十分な原資が必要である。
 国民の生命と健康を守るため、医療・介護分野における賃上げ・物価高騰に対する取組を進め、国民に不可欠、かつ日進月歩している医療・介護を提供しなければならない。
 よって、適切な財源を確保するよう、本大会参加者全員の総意として、強く要望する。
以上、決議する。
 令和6年11月22日
国民医療を守るための総決起大会

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