日本医師会定例記者会見 10月23・30日
城守国斗常任理事は、「医師の働き方改革と地域医療への影響に関する日本医師会調査」(制度開始後調査)についての集計結果を取りまとめたことを報告し、その内容について説明を行った。
今回の調査は8月20日~9月2日で実施したものであり、調査対象は全国の病院及び有床診療所の合計1万4216施設。回答があったのは4082(病院2960、有床診療所1122)施設で、回答率は28・7%であった。
城守常任理事はまず、「地区ブロック別」「病床規模別」の回答状況等に言及した後、特例水準の指定状況について説明。特例水準の指定を受けている医療機関は364施設(全体に占める割合は8・9%)であり、そのうちの多くはB水準であるとした。
続いて、「自院の医療提供体制における影響」として、(1)制度開始直前調査より影響が小さくなっている項目、(2)制度開始直前調査より影響が大きくなっている項目、(3)医師の派遣・受け入れの状況―等に分けて説明するとともに、地域の医療提供体制における影響に言及。
(1)では、「管理者(病院長)の業務負担」「教育・指導体制」「周産期医療体制」について、今回調査の結果と制度開始直前の調査結果を比べると、調査客体が異なるものの、懸念されていたほど大きな影響は生じていないとした。
(2)では、「小児医療体制」「救急医療体制」「手術件数」「宿日直体制」「外来診療体制」について、いずれの結果も大きな影響は生じていないとする一方、手術件数が減少していることについては、「働き方改革の影響以外にもさまざまな要因が考えられるが、その中には、小児及び救急医療体制の縮小及び撤退の検討が進んでいることがあるのではないか」との懸念を表明。その他、宿日直や外来診療の体制についても、働き方改革の影響が多少なりとも及んでいると思われるとの見解を示した。
(3)では、①医師を派遣している②医師を受け入れている③医師の派遣と受け入れの双方を行っている―医療機関に分けて集計した結果を報告。
①では、「医師の引き揚げによる影響」「宿日直の応援医師の派遣」について、現時点では引き揚げる医師数の増加や、宿日直の応援医師の派遣を制限する事例の増加が直前調査に比べて若干大きくなっているが、令和7年度以降には、引き揚げる医師数や宿日直応援医師の派遣制限事例が増加するとの見込みが、直前調査より小さくなることが見込まれているとした。
②では、現時点や令和7年度以降のいずれにおいても、引き揚げにより医師数が減少する、宿日直の応援医師の確保が困難になるとの見込みが、直前調査より小さくなることが見込まれるとした。
また、「地域の医療提供体制で実際に生じていると考えている問題点」については、病院、有床診療所共に「救急搬送の受入困難(断り)事例の増加」に大きな懸念をもっているとした他、「専門的な診療科の紹介患者(ハイリスク患者)の受入困難(断り)事例」及び「医療圏域外への搬送事例」の増加についても懸念をもっており(図)、「地域の医療提供体制で懸念される問題」としては、①救急医療体制②周産期医療体制③専門的な医療提供体制④小児医療体制―の縮小・撤退等があるとした。
今後の状況を注意深く見守っていく
これらの調査結果を受け、城守常任理事は、「現時点では、全体的に想定したほどの影響は出ていないと言えるのではないか」としつつ、医師の引き揚げ増加や宿日直の応援医師の確保の困難さが、各医療機関の医療提供体制にどのような影響を及ぼすのか、また各地域の医療提供体制に及ぼす影響や、地域で実際に生じていると考えられる問題点がどのように変化していくかについても注意深く見守る考えを示した。
更に、今回の結果については、「各都道府県医師会には都道府県別集計をフィードバックするので、行政と共有することで地元の医療機関への支援のための検討材料として活用して欲しい」とした他、日本医師会としても国と情報共有しつつ、今回の調査結果を基に国として個別の聞き取り等の実態調査を実施し、データの精緻(せいち)化が進むことに期待感を示した。
その上で、同常任理事は医師の働き方改革について、地域医療に大きな影響を及ぼさないようにすると同時に、医師の健康確保・医療の質の維持向上とのバランスも取りながら、医療関係団体とも協力し、進めていく考えを改めて強調した。
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