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令和6年(2024年)12月20日(金) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

財政審の「社会保障」の議論等に見解示す

日本医師会定例記者会見 11月20日

財政審の「社会保障」の議論等に見解示す

財政審の「社会保障」の議論等に見解示す

 松本吉郎会長は、11月13日に開催された財政制度等審議会財政制度分科会において、「社会保障」について議論された内容、特に、(1)医療機関の経営情報のさらなる「見える化」、(2)診療所の偏在是正のための地域別単価の導入、(3)セルフケア・セルフメディケーション、(4)研究開発(AMED)―に対する日本医師会の考えを説明した。
 (1)では、まず、財政審が「医療機関の経営情報のさらなる『見える化』」について提言していることに言及。昨年5月に公布された「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」の附帯決議において、「当該データベースの報告対象となる医療法人及び介護サービス事業者に過度な事務負担が生じないよう、負担軽減策もあわせて講ずること」とされていることを挙げ、できるだけ多くの医療機関からデータの提出を受けるためには、まずは状況を把握した上で、慎重に対応すべきであるとの認識を示した。
 (2)では、わが国では国民皆保険制度の下、誰もが、どこでも一定の自己負担で適切な診療を受けられることを基本理念とし、診療報酬については、被保険者間の公平を期す観点から、全国一律の点数が公定価格として設定されていることを指摘。日本医師会として、この制度を堅持していくべきとの考えに変わりはないことを改めて強調した。
 その上で、「医師の分布は各地域の人口に応じて決まるものであり、診療所の過不足の状況に応じて診療報酬を調整する仕組みとすることは、わが国の人口分布の偏りを医療で調整させるかのような極めて問題の多い提案である」と述べるとともに、「昨今の急激な人件費の増加や物価高騰等の影響により、医療機関の経営が非常に厳しい状況にある中で、都市部の医療機関の診療報酬単価を下げるという提言は、医療現場の感覚から著しく乖離(かいり)した典型的な机上の空論であり、国民の生命と健康を守る立場である日本医師会として決して容認できない」とした。
 更に、財政審の主張の中にある「特定過剰サービス」という発想についても、「そもそも容認できるものではない」と強調した。
 (3)では、まず、セルフメディケーションはセルフケアの一つの手段であり、OTC医薬品の適切な選択、助言・相談体制、つまりは薬剤師の的確な受診勧奨に基づく情報共有とともに、医療機関との連携がその根幹にあることを説明。ヘルスリテラシーを欠き、医療費適正化の目的のみを過度に進めるようなセルフメディケーションの推進には断固反対であるとした。
 また、①諸外国と比較し、日本人のヘルスリテラシーが非常に低いとの指摘がある②OTC医薬品による急性中毒や薬物依存等、不適正使用が増加している③OTC医薬品購入時に専門家が常駐しておらず、適切な情報提供がされていない事例がある―ことなどを挙げ、国に対して、国民の安心・安全を第一にしたセルフメディケーションを推進するよう求めた。
 また、財政審がOTC類似薬における保険給付のあり方の見直しなどに言及していることについては、「『必要かつ適切な医療は基本的に保険診療により確保する』という国民皆保険制度の理念を形骸化させるもの」と強く非難し、容認する余地は微塵(みじん)もないと一蹴した。
 (4)では、日本医療研究開発機構(AMED)について、基礎的な研究は長いスパンで考慮することが必要であり、性急に成果を求めることや、過剰な予算削減を慎むよう要望した。
 更に、松本会長は医師偏在対策について、11月14日に開催された自民党の政調全体会議に出された資料「新たな総合経済対策(仮称)(案)」において、「医師偏在是正に向け、今後の人口動態等により、将来の医療機関の維持が困難な地域において、診療所を承継又は開業する場合に、当該診療所の施設設備等を支援する。中堅・シニア世代等の医師を対象としたリカレント教育や医師少数地域の医療機関とのマッチングを支援する。地域枠学生を受け入れる大学の地域枠センター(仮称)の設置を支援する。」と記されたことにも言及。「『全国レベルの医師マッチング支援』との記述については日本医師会の要望が現実の形になったもの」と歓迎の意向を示し、現在、委託を受けている女性医師支援センターのノウハウを活用しながら、日本医師会としても取り組んでいきたいとした。
 また、この問題については年末までに総合的な対策のパッケージが策定される見込みであることに言及し、令和6年度補正予算、令和7年度予算、更には、厚生労働省社会保障審議会医療部会等での議論を踏まえた令和8年度予算により、できるところから対応を進めることが重要との認識を示した。

国民皆保険制度堅持のため攻防一体の対応を続ける

 その他、松本会長は「新たな総合経済対策(仮称)(案)」について、日本医師会としてこれまで石破茂内閣総理大臣、加藤勝信財務大臣、福岡資麿厚労大臣等に、賃上げ・物価高騰に関する要望を行ってきた結果、同対策案に、(1)賃上げ環境の整備のため、「令和6年度報酬改定において講じた医療・介護・障害福祉分野の職員の処遇を改善するための措置を確実に届ける」、(2)現下の物価高騰を含む経済状況の変化により、地域医療構想の推進や救急医療・周産期医療体制の確保のための施設整備等が困難となっている場合への対応を進める、(3)地域の実情等に応じた物価高騰対策の推進として、医療施設等へのエネルギー価格や食料品価格の高騰に対する支援を継続しつつ、「重点支援地方交付金」の更なる追加を行う―ことなどが明記されたことを報告。「日本医師会としては、今後も攻めるところは攻め、守るべきものはしっかり守るといった攻防一体の対応を続け、国民皆保険制度の堅持に努めていく」とした。

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

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