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令和6年(2024年)12月5日(木) / 日医ニュース

各医会の現状や課題等について意見交換

各医会の現状や課題等について意見交換

各医会の現状や課題等について意見交換

 第31回日本臨床分科医会代表者会議が10月31日、都内で開催され、日本医師会から今村英仁常任理事が出席し、伊藤隆一日本小児科医会長を始め、出席した各会の代表者らと意見を交わした。
 冒頭、あいさつした今村常任理事は、薬価問題について言及。薬価引き下げによる薬の供給不足や海外製薬会社の日本市場からの撤退などの課題を指摘した他、スイッチOTC化についての日本医師会の考え方を説明し、関係学会・医会に対して候補成分に関する意見聴取への協力を求めた。
 続いて、日本医師会事務局より、厚生労働省「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」の目的等について説明し、「OTC化候補成分に対する医会の見解を提出する際には、賛否を明確に記載して欲しい」と要望した。
 続いて、13の医会から、各会での取り組みや現状、課題等について発表がなされた。
 白根雅子日本眼科医会長は、子どもの近視問題について触れ、文部科学省主導の3年間にわたる全国調査で、休み時間によく外で遊ぶ子どもが近視になりにくいという結果が示されたことを踏まえ、文科省が作成した近視に関する子ども向けの注意喚起冊子には、従来からある「明るい部屋で」「近くで見ない」「時々きゅうけい」に加え、「できるだけ外で遊ぼう!」という文言が追加されたことを報告した。
 万代恭嗣日本臨床外科学会長は、学会の二つの主軸である学会開催と若手外科医のためのセミナー開催について説明。セミナーは40歳以下の次世代の外科医を対象に、全国から100~130名を集めて毎年開催しているが、外科医を志望する医師が減少していることを受けて、若手外科医の育成と確保に向けてセミナーの内容を改善し、世界で活躍する若手外科医の発表を取り入れるなどの工夫をしていることを紹介した。

241205j2.jpg 石渡勇日本産婦人科医会長は、会員にHPVワクチンの接種推進への協力を積極的に呼び掛けていることを報告。同ワクチンの接種率低下により、日本の子宮頸がん発症率が増加傾向にあることを懸念しているとした上で、ワクチン接種と検診を徹底することで、2070年までに子宮頸がんを撲滅できる可能性があるというWHOの試算結果を基に、本会議参加の他科の医会にもHPVワクチン接種推進への協力を求めた。
 川嵜良明日本臨床耳鼻咽喉科医会長は、日本の難聴自覚率が他国と同程度(約10%)であるにもかかわらず、受診率や補聴器使用率が低いことを指摘。ACジャパンを通じた難聴啓発キャンペーンについて報告するとともに、より恒久的な運動として、必要に応じて補聴器の使用を推奨し、80歳で30デシベルの聴力を目指す「聞こえ8030運動」を展開していることを報告した。
 佐藤好範日本小児科医会副会長は、日本の出生率が過去のベビーブーム時の3分の1以下に減少していることに触れた上で、「伴走型子育て支援の実現」「会員の育成」などに取り組んできたことを説明。また、災害等で心の傷を受けた子ども達の行動を理解し、早期に適切な対応ができるよう、冊子『子どもの心のケアのために』を作成し、1月の能登半島地震の際に、地域の小児科医を通じて子どもの保護者に配布したことを報告した。
 長谷川利雄日本臨床整形外科学会理事長は、医薬品の供給不足問題について、局所麻酔薬の供給不足が整形外科医療に大きな影響を与えているため、厚労省医政局長宛てに局所麻酔薬の安定供給を求める要望書を提出する考えを表明。また、局所麻酔薬が他科でも使用される薬剤であることから、各医会代表者との連名で提出することを提案し、協力を求めた。
 三木和平日本精神神経科診療所協会長は、日本外来精神医学会を設立し、9月に第1回学術講演会を開催したことを報告。一方で、急激な精神疾患患者数の増加やチェーンクリニックの急増などの問題に対しては、認定医を増やして対応していく姿勢を示した。
 菅原正弘日本臨床内科医会長は、日本内科学会と共同で本年から7月1日を「内科の日」に制定したことを発表し、今後の事業内容については検討中であるとした。
 また、診療報酬改定に関しては、「かかりつけ医機能」「医療DX関連」に関する加算等について説明した上で、今後の課題として事務作業や設備等の経済的負担の増加を挙げた。
 嘉山孝正日本臨床脳神経外科協会理事長は、診療所として開業した脳神経外科医は協会役員になることができないという協会規約が問題となっており、規約の改定の準備を進めているとした他、脳神経外科は他科と比べて医療スタッフとの連携がより重要であることから、協会内での医療スタッフの立場についても併せて検討していることを報告した。
 清原久和日本臨床泌尿器科医会長は、医会内で行った働き方改革に関するアンケート結果を発表。約50%の回答者が「大きな変化は無い」と回答し、40%が「困っていない」と回答している一方で、個別の回答では、医療機関規模に応じた課題が浮き彫りになっていることを説明した他、会員獲得のための新しい取り組みとして、AIを活用したチャットボットの開発について報告した。
 江藤隆史日本臨床皮膚科医会長は、被災地支援において、被災地における専門領域の医療ニーズを明確に把握することができるのであれば、日本医師会災害医療チーム(JMAT)本部が都道府県医師会を通さずに各医会へ派遣要請を行い、被災者に寄り添った医療支援ができるのではないかと提案。また、診療報酬に関しては日本医師会とも協力し、会員へ「外来・在宅ベースアップ評価料」算定の周知を行っていることを報告した。
 山田惠日本放射線科専門医会・医会理事長は、創立50周年記念事業の一環として行われた有識者へのインタビュー記事について説明。専門医の数よりもクリニックが多い現状を指摘し、特に放射線科や病理など特定の領域での自由開業について問題提起した。
 武田純三日本麻酔科医会連合代表理事は、麻酔科医療の現状について、全身麻酔の手術件数が1993年から2014年に掛けて約2倍に増加し、麻酔科医師数も1・8倍に増加したが、麻酔科医の絶対数はまだ不足していると指摘。また、一般・消化器外科、小児外科などの外科の専門分化に伴い麻酔科医の需要も変化してきているとした上で、心臓血管外科などの特殊な分野では、専門的な麻酔技術が求められているとした。

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