日医ニュース
日医ニュース目次 第1075号(平成18年6月20日)

勤務医のページ

平成16・17年度勤務医委員会答申(その2)
「医療環境変革期における勤務医の役割」

 勤務医委員会では,会長からの諮問「医療環境変革期における勤務医の役割」について検討を行い,昨年12月に答申を取りまとめた.今号では,本誌第1073号(5月20日号)に引き続いて,その概要を紹介する.

四,医療の質の向上
 今,医療に求められているものの一つに医療の安全を含めた質の高い医療の提供がある.
 しかし,いまだに医療事故の報道が相次ぐ状況で,医療の安全性,医療に対する信頼が損なわれている.医療事故の起きない安全な医療の提供こそが,良質な医療といえる.
 医師個人,特に勤務医は,(1)インフォームド・コンセントをきちんとする(2)医師―看護師―患者の十分な連携,意思の疎通を図る(3)事故を隠さない,速やかに上司,管理者に報告,連絡,相談をする(4)その時点での臨床医としての医療水準に適った医療を提供する(5)診療録の正確な記載をする―といった医療安全への取り組みが強く求められる.

III 医師会の変革と勤務医

 医師会の約半数を勤務医が占めていることに比し,役員ならびに代議員における勤務医の比率が低い.
 今後,全会員をまとめていくためにも,代議員は勤務医の比率に応じた数に近づけることが望ましく,医師会役員についても,勤務医で意欲があり,会務を積極的に担える人材を育成することが重要である.
 勤務医が医師会会務へ主体的に参画することを通して,医師会自体の変革が得られるであろうし,医師会が地域医療を守る公益法人として,広く国民から再認識されることにも役立つものと考えられる.

IV 勤務医の意識改革

 病院に勤務する医師の組織における役割として,(1)病院の診療の担い手としての役割(2)チーム医療の統括者としての役割(3)後輩医師(研修医師を含め)の指導者としての役割(4)医局のローテーション人事であれば,その一員としての役割―などがある.
 この役割の目標実現に対して,勤務医の不足がますます一人当たりの負担を増し,勤務医の労働環境を悪化させている.このままでは,勤務医の疲弊感は増大し,医療の安全も損ないかねない.今こそ,勤務医がその仕事にやりがいと誇りを持てるような環境をつくり,上記の役割を果たすべきである.
 病院の機能分化や職能による仕事の分担もその一つであろうが,何よりの解決策は,医療にかかわるマンパワー(医師数)の充実にあると考えられる.マンパワーを充実し,結果として医師のワークシェアリングを発展させて,勤務医の仕事に十分な価値と日々の充実感が見出せるようにしなければならない.
 日々求められる役割の負担が増えるなか,勤務医としての立場にとどまることの価値が評価されなければならない.

V 勤務医と医政活動

 医政活動に対して日医を始めとする全国の医師会ならびに勤務医が果たすべき役割について,次のとおり提言する.
 (一)日医・都道府県医師会・郡市区医師会(以下,「医師会」という)は,医師会主催・共催の学術講演会,あるいは各専門医団体主催の学会などにおいては,一部の時間を割いて,諸問題に関する医政ミニ講座(五〜十分)を設ける.
 (二)医師会は,勤務医のほとんどが得意としている,何らかのインターネット通信を利用して,諸問題に関する医政ミニ通信を配信する.
 (三)医師会は,さまざまな医政活動を,勤務医に対しても遠慮なく役割分担させる.
 (四)医師会は医療従事者や患者向けの,諸問題に関する簡潔明解なパンフレットを作成し,会員の日常の医政活動をサポートする.
 (五)勤務医は日常会話のなかに,諸問題に関する話題を提供し,家族や医療従事者に関心を持たせる.
 (六)勤務医は診療の場において,時には諸問題に関する話題を提供し,担当患者に関心を持たせる.
 (七)勤務医は,健診事業や各種委員会活動,医政活動など,与えられた役割に積極的に参加・協力する.一方,病院長や上司は,その活動への参加をサポートする.
 (八)勤務医は,さまざまな医政活動を通じて,開業医と志を一つにし,医師会の存在意義を高める.
 (なお,答申全文は,日医ホームページ「勤務医のコーナー」に掲載しているので,ご覧いただきたい)

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