日医ニュース
日医ニュース目次 第1297号(平成27年9月20日)

第26回全国医師会共同利用施設総会
「地域医療構想と今後の医師会共同利用施設─医療、保健、介護・福祉の連携─」をメインテーマに開催

第26回全国医師会共同利用施設総会/「地域医療構想と今後の医師会共同利用施設─医療、保健、介護・福祉の連携─」をメインテーマに開催(写真) 第26回全国医師会共同利用施設総会(主催:日医、担当:大阪府医師会)が8月22、23日の両日、「地域医療構想と今後の医師会共同利用施設─医療、保健、介護・福祉の連携─」をメインテーマとして、535名の参加の下、大阪市内で開催された。
 日医からは、横倉義武会長を始め、今村聡・松原謙二両副会長、小森貴・羽鳥裕・松本純一各常任理事が出席した。

共同利用施設の役割の重要性を強調

第26回全国医師会共同利用施設総会/「地域医療構想と今後の医師会共同利用施設─医療、保健、介護・福祉の連携─」をメインテーマに開催(写真) 22日に開催された総会では、伯井俊明大阪府医師会長を座長に、横倉会長が、「日本医師会の医療政策」と題して特別講演を行った。
 横倉会長は、「地域包括ケアの推進」について詳説する中で、「国民に切れ目のない医療・介護を提供するためにも地域の医師会が中心的な役割を果たさなければならず、かかりつけ医をサポートするのが医師会共同利用施設の役割である」と同施設の重要性を強調。郡市区医師会にはまちづくりの中心的役割を担うことを期待し、市町村行政への積極的な関与を呼び掛けた。
 更に、「平成28年度診療報酬改定」に関しては、「医療は単なる消費ではなく、医療の拡充による国民の健康水準の向上が経済成長にもつながる」として、「国民が適切な医療を受けるため、過不足のない財源の確保が重要」と強調し、年末の予算編成に向けて政府与党に対して、その考えを繰り返し説明していく意向を示した。
 引き続き、小堀悦孝全国医師会共同利用施設施設長検査健診管理者連絡協議会長/藤沢市保健医療センター所長が、平成26・27年度の同連絡協議会の活動について報告。その後、三つの分科会に分かれて、シンポジウムが行われた。

各地域の取り組みを説明

 第一分科会(医師会病院関係)(座長:羽鳥常任理事)では、秋田県の高橋貞二能代山本医師会病院長が、能代山本医師会病院の取り組みを紹介。同病院では、周辺の公的病院と共に救急輪番制で地域医療を支えており、地域の医療事情や透析患者の受け入れ態勢を考慮して、一部を療養病床へ転換したことなどを説明した。
 埼玉県の松本万夫東松山医師会病院長は、東松山医師会病院の取り組みや歴史などを紹介。病院と会員医師との関係強化だけではなく、周囲の公的・民間病院と調整して、地域における病病連携・病診連携を行っていることを報告した。
 山口県の津田廣文徳山医師会長は、地域医療支援病院オープンシステム徳山医師会病院が50周年を目前に控え、病院本館を新築。完全開放型オープンシステムにより、登録医へ病院の施設・設備を開放し、開業医師と病院勤務医、大学の専門医の3者により、患者を診ていることなどを説明した。
 福岡県の火野坂徹朝倉医師会長は、朝倉医師会病院の取り組みを紹介。同病院では、介護老人保健施設や介護支援センターを医師会の単独事業として運営していること、地域医療介護総合確保基金を活用して、「在宅医療相談窓口事業」や「在宅医師同行訪問事業」「退院時連携促進事業」などを行っていることが紹介された。

検査・健診センターでの情報連携を紹介

 第二分科会(検査・健診センター関係)(座長:池田秀夫佐賀県医師会長/日医医師会共同利用施設検討委員会副委員長)では、東京都の山中昭良江戸川区医師会医療検査センター所長が、同センターの取り組みとして、自営の検体検査施設を活用した「当日健診・当日保健指導」の実施や、健診当日に検査結果等を載せた「情報提供冊子」を配布していることなどを紹介した。
 愛知県の花井俊典半田市医師会長は、半田市医師会健康管理センターで2010年より「DrWeb」の利用を開始し、臨床検査、画像検査をリアルタイム閲覧や、医師会内のコミュニケーションツールとして多職種間の情報共有を行い、民間センターとの差別化を図っていることを報告した。
 武本優次大阪府医師会理事は、大阪府医師会保健医療センターの現状を紹介した上で、その問題点として、医療部門における紹介患者数の減少傾向や、細胞診・病理組織診の検体集配システムを保有していないことなどを取り上げ、「今後、精度向上を図りつつコストダウンに努め、安定した健全運営を目指したい」とした。
 沖縄県の崎原永辰那覇市医師会生活習慣病検診センター所長は、同センターで「LHRシステム」(生涯健康記録)の構築を進めている他、システムの維持管理には、医師会の財源や公的補助を使わず、民間サポーターからの広告収入のみで運営していることなどを説明した。
 窪寺健日本医師会総合政策研究機構客員研究員は、健診標準フォーマットによる健診・検診データベース構築の状況報告として、本年4月に「日医健診標準フォーマット」を公表別記事参照、今後14施設に対してデータ変換作業、データベースの構築を行う予定であり、引き続き標準化された健診・検診データの利用を推進していきたいとした。

多職種協働による取り組みを説明

 第三分科会(介護保険関連施設関係)(座長:篠原彰静岡県医師会長/日医医師会共同利用施設検討委員会委員長)では、神奈川県の増田英明横浜市医師会常任理事が、横浜市行政と協働して在宅医療連携拠点事業を進め、平成25年から訪問看護ステーション内に在宅医療相談室を設置したことを報告。
 相談室には高齢者医療等に係る施設からも相談が寄せられており、引き続き、在宅医療、地域包括ケアの実現を目指していきたいとした。
 大阪府の前川たかし堺市医師会理事は、同医師会介護老人保健施設「いずみの郷」について、一時、高い人件費が原因で経営が危うくなることもあったが、平成19年から同施設内に委員会を立ち上げ、給与制度・人事考課制度改革を進めた結果、黒字に転換したことなどを説明した。
 広島県の伊藤勝陽尾道市医師会介護老人保健施設「やすらぎの家」施設長は、尾道市医師会が中心となって医療・介護連携を進めており、2011年よりICT基盤整備で「天かけるネット」の構築を進め、急性期病院の情報開示や情報共有を行っていることを紹介した。
 長崎県の敏子島原市地域包括支援センター所長は、高齢者の見守りや認知症に対応するため、「高齢者等の見守りネットワーク」「SOSネットワーク」を構築するなど、地域づくりの活動を続けているとした他、二つのネットワークに加えて「在宅医療推進ネットワーク」の構築も進めていることを説明した。

総合討論、施設見学を実施

 2日目の8月23日には、武本優次大阪府医師会理事より、大阪府内の共同利用施設の紹介があった。
 その後、各分科会報告に続き、羽鳥常任理事を座長とした全体討議が行われた。その中では、在宅医療を行う医師の確保や地域包括ケアのモデルケースの例示など、日医に対する要望も示された。
 最後に、今村副会長が、「本総会で共有された成果をおのおのが地元に持ち帰り、医師会共同利用施設の更なる発展に寄与することを期待する」と総括し、総会は終了となり、参加者はそれぞれ、大阪府医師会保健医療センター、堺市医師会介護老人保健施設「いずみの郷」の施設見学を行った。
 なお、次回の共同利用施設総会は、平成29年度に大分県医師会の担当で開催される予定となっている。

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